日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 山の科学

2024年5月27日(月) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、座長:西村 基志(国立極地研究所 北極観測センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

14:00 〜 14:15

[MIS11-02] 白馬連山の杓子沢雪渓の氷化年数と氷化過程

武田 皓明2、*奈良間 千之1竹内 望3 (1.新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム、2.新潟大学大学院自然科学研究科、3.千葉大学理学部)

キーワード:多年性雪渓、アイスコア、花粉分析、氷化過程

飛驒山脈では,厚い氷体の存在と流動観測により七つの氷河が確認されている.これら氷河に関して,積雪が氷河氷へ相変化する氷化過程は明らかでない.氷化過程を明らかにする際の課題として年層境界の判読がある.明確な涵養域が存在しない日本の氷河・雪渓において,年層境界の判読には汚れ層が用いられてきた.雪崩涵養型雪渓では,その涵養形態から積雪層内に雪崩起源の汚れが含まれる場合があり,雪面上でも水流やスプーンカットの形態の影響で汚れの分布が異なるため,汚れ層による区分は正確に年層区分できない可能性がある.そこで本研究では,花粉分析と酸素同位体比分析を用いて,杓子沢雪渓における年層および汚れ層の評価をおこない,氷化過程について考察した.
 本研究の調査対象地域は,飛驒山脈北部の白馬連山に位置する杓子沢雪渓である.2022年10月14~15日と2023年9月18日にそれぞれ706cmと330cmの2本のアイスコアを掘削し,現地で密度・含水率を測定し,持ち帰ったコアで花粉分析と酸素同位体比分析をおこなった.これら分析の結果,花粉濃度ピークと汚れ層は一致せず,汚れ層を年層としてフィルンと氷体の年層を見積もると年数を過小評価する可能性がある.また,数値標高モデル(DSM)から求めた涵養深を用いて上載荷重を推定したところ,海外の温暖氷河と同等の数値が得られた.このことから,杓子沢雪渓の氷化過程は圧密氷化によるものと考えられる.