日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 山の科学

2024年5月27日(月) 15:30 〜 16:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、座長:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)

16:00 〜 16:15

[MIS11-08] 多数の重力性凹地の形成・成長年代から復元した山体重力変形の進行過程―越美山地,若丸山の事例―

*小村 慶太朗1金田 平太郎2、柏原 真太郎3、大森 貴之4、尾嵜 大真4、山﨑 孔平4加藤 和浩5、森谷 透6、門叶 冬樹6、武山 美麗6小嶋 智7 (1.(一財)電力中央研究所、2.中央大学理工学部、3.(株)基礎地盤コンサルタンツ、4.東京大学総合研究博物館、5.(株)パレオ・ラボ、6.山形大学高感度加速器質量分析センター、7.岐阜大学名誉教授)

キーワード:山体重力変形、深層崩壊、越美山地、若丸山、根尾谷断層、湿潤変動帯

山体の頂部やその周辺にはしばしば二重山稜や山向き小崖,線状凹地などの微地形が発達し,それらは山体が自重に伴って変形した結果,形成された地形(山体重力変形地形)と考えられている。少なくともその一部は大規模な深層崩壊の前兆的地形とされているが,その形成過程を実証的な年代を基に解明した事例は少ない。
 岐阜県と福井県にまたがる越美山地の中央部に位置する若丸山(1286m)の東方稜線上には100条を超す山向き小崖とそれに伴う約30の重力性凹地(湿地)が密集しており,極近傍を走る活断層である根尾谷断層の過去の活動によってこれらの地形が形成・成長してきた可能性が報告されている。本研究では,若丸山東方稜線上の11ヵ所の湿地において,ハンドオーガーと可搬型パーカッションコアリングシステムによるコア掘削を行い,その形成・成長年代に基づき,山体重力変形の進行過程を復元した。その結果,若丸山サイトは,20,100~7800 calBPに最初の凹地が形成され,その後4~6回の重力変形の進行イベントを経験していることが明らかとなった。山向き小崖群は,最初に稜線頂部で形成され,その後両側斜面へ広がるように形成されたものと推定される。一方,ヨーロッパアルプスなど,高緯度・高標高地域の山体重力変形地形では山向き小崖がまず中腹で形成され,その後,崖の形成場が徐々に山体頂部に移動する事例が報告されている。本研究地域のような湿潤変動帯と高緯度・高標高地域において山体重力変形の進行過程が異なる理由として,V字谷とU字谷に代表される下刻様式の違いに伴う谷の断面形態の差異が挙げられる。