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[MIS12-16] 放射性炭素年代較正法の革新的進展による南大洋コアの年代モデルの改善
キーワード:南大洋、放射性炭素年代、リザバー年代、最終氷期
南大洋の表層水の見かけの放射性炭素年代は熱帯よりもはるかに古く、初期の研究では現代の南極表層水の年代はおよそ1,200年と推定されていた(Stuiver and Polach, 1977)。さらに、ニュージーランド沖のコア分析から、最終氷期の南大洋表層水の放射性炭素年代がさらに古い可能性が提唱され、11,900年前の14Cリザバー年代は熱帯域の2倍(800年)であり、最終氷期には5倍の2,000年であったことが示唆された(Sikes et al., 2000)。多くの南大洋古海洋学者たちは、最終氷期のリザーバー年代がより古いことを疑っていたが、地域的かつ系統的に入手できる南大洋の氷期のリザーバー年代に関する情報がほとんどなかったため、その影響を無視して南大洋コアの年代モデルを構築せざるを得なかった。しかし最近、最終氷期の緯度ごとの南大洋表層水のリザーバー年代を推定した研究が報告された(Heaton et al., 2023)。これにより、南大洋コアの年代モデル構築に革新的な進展がもたらされつつある。
本研究では、Heatonらの成果を南大洋インド洋区のコンラッドライズから採取された海洋コア(COR-1bPC)に適用し、従来の年代モデルとの相違を検証した。このコアの最下部は約43000年前であり、23層準で浮遊性有孔虫の14C年代が既に得られている。暦年代較正は、Marine20較正曲線 (Heaton et al., 2020)を用いたMatCal (Lougheed and Obrochta, 2016)と、極域において変化する海氷条件の影響を考慮するための2つの異なる追加リザーバー年代補正(ΔR)シナリオ(Heaton et al., 2023)を用いて行われた。新しい年代モデルでのCOR-1bPCの堆積年代をMarine13で較正されていた既存の年代モデルと比較したところ、最終氷期から退氷期の堆積年代が平均で約870年、最大で約1400年若くなった。その結果、COR-1bPCの古海洋プロキシ記録と南極アイスコアの古環境記録との比較がより現実的なものに改善された。南大洋における多くの古海洋研究は、氷期の堆積年代を現代と同じリザバー年代で較正しているため、数百年から千年程度古い年代軸で議論が展開されてきたことになる。よって、南大洋における最終氷期から退氷期における短周期変動とアイスコアや熱帯域の古環境変動記録を比較した議論のほとんどは再検討すべきであろう。
本研究では、Heatonらの成果を南大洋インド洋区のコンラッドライズから採取された海洋コア(COR-1bPC)に適用し、従来の年代モデルとの相違を検証した。このコアの最下部は約43000年前であり、23層準で浮遊性有孔虫の14C年代が既に得られている。暦年代較正は、Marine20較正曲線 (Heaton et al., 2020)を用いたMatCal (Lougheed and Obrochta, 2016)と、極域において変化する海氷条件の影響を考慮するための2つの異なる追加リザーバー年代補正(ΔR)シナリオ(Heaton et al., 2023)を用いて行われた。新しい年代モデルでのCOR-1bPCの堆積年代をMarine13で較正されていた既存の年代モデルと比較したところ、最終氷期から退氷期の堆積年代が平均で約870年、最大で約1400年若くなった。その結果、COR-1bPCの古海洋プロキシ記録と南極アイスコアの古環境記録との比較がより現実的なものに改善された。南大洋における多くの古海洋研究は、氷期の堆積年代を現代と同じリザバー年代で較正しているため、数百年から千年程度古い年代軸で議論が展開されてきたことになる。よって、南大洋における最終氷期から退氷期における短周期変動とアイスコアや熱帯域の古環境変動記録を比較した議論のほとんどは再検討すべきであろう。