日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月30日(木) 13:45 〜 15:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)、座長:小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

14:30 〜 14:45

[MIS12-24] 大気海洋植生結合モデルを用いた鮮新世と現代の降水量の違いの要因分析

*中川 祥緒1阿部 彩子1陳 永利2樋口 太郎1大石 龍太1小長谷 貴志1 (1.東京大学、2.海洋研究開発機構)

キーワード:気候モデル、古気候、鮮新世

鮮新世は、現代よりも温暖な時代であり、アフリカが現代よりも湿潤であったことが知られている。PMIP2のアンサンブル実験の解析では、高い大気CO2濃度によってサハラ地域の気温が高くなったことが西アフリカモンスーンの強化に繋がったと考えられている(Berntell et al., 2021)。現代の地理条件では、軌道要素とそれに伴う氷床量の変動によっても、アフリカの降水量が周期的に変化することが分かっている(Armstrong et al., 2023)。一方で、鮮新世では、ハドソン湾が陸地であった、ベーリング海峡が陸続きであった、グリーンランドや西南極の氷床が小さかったなど、大気CO2濃度の他に地理条件も現代と異なっていたことが知られている。この大気CO2濃度以外の要因がアフリカ北部や西アジアの降水量の違いに大きな影響を与えていることは、これまでに示唆されている(Burton et al., 2023)。しかし、地理条件の違いがどのようなメカニズムで降水量の違いに影響を与えていたのかは明らかになっていない。
本研究では、大気海洋植生結合モデルMIROC4m-LPJを用いて、大気CO2濃度と地理条件をそれぞれ現代と鮮新世のものにした数値実験を実施し、実験結果の解析を行なった。その結果、地理条件を変えた方が大気CO2濃度を変えた場合よりも大きな降水量の違いが見られた。特に、アフリカ北部から西アジアにかけての地域で、夏の降水量が大幅に増加していた。ハドソン湾などの地理条件の違いは、アフリカ北部などの離れた地域の降水量の変化にも影響を及ぼすということが分かった。鮮新世では、ハドソン湾が陸地になっていることで、夏に北半球の大陸上がより温暖になりやすくなっていた。北半球大陸上の温暖傾向によって海陸の温度差が大きくなり、モンスーンの強化に繋がったと考えられる。