日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS12-P03] モンゴル東部Buir湖の湖底堆積物から復元する過去数百年間の古環境変動と植生変遷(Preliminary result)

*宮本 航平1、志知 幸治2長谷川 精1今岡 良介1勝田 長貴3、イチノロフ ニーデン4、ダワースレン ダワドルジ5村山 雅史1岩井 雅夫1出穂 雅実6 (1.高知大学、2.森林総合研究所、3.岐阜大学、4.モンゴル古生物研究所、5.モンゴル国立大学、6.東京都立大学)

キーワード:花粉分析、植生変遷、永久凍土、夏季モンスーン、モンゴル

モンゴル東部Buir湖は永久凍土帯の南限と砂漠帯との境界部に位置し,ステップ気候帯に分類される。加えて東アジア夏季モンスーンの限界域にも位置しており,気候変動に対して敏感な地域である。本研究ではBuir湖の湖底堆積物中の元素組成と花粉群集の変化から,モンゴル東部の過去数百年間の古環境および植生変遷の復元を試みた。

本研究で用いた試料は,2021年2月にBuir湖で佐竹式コアラーを用いて採取したグラビティコア(80㎝長)である。Buir湖はモンゴルと中国の国境に位置する平均水深8mの淡水湖であり,ハルハ川という流入河川を持つ。また,流出河川が一つあり下流に位置する中国北東部のHulun湖に流入している。コアは暗緑灰色の粘土質堆積物からなり,¹³⁷Csと210Pb測定の結果から,¹³⁷Csピークの見られた深度12cm部が1963年,¹³⁷Cs増加が見られた深度24cm部が1952年と考えられる。堆積速度一定と仮定すると,最深部80cm部は約234~400年前と推定される。同コアを1㎝ごとに分割した試料を用いて花粉分析を行った。またXRFコアスキャナー(Itrax)を用いて0.5mm毎の高解像度元素組成分析を行った。

まずItraxを用いた元素組成分析の結果を見ると,Zr/Rb比からコアの上部0-60㎝に比べて下部60-80cmはやや細かい粒径をしていることが分かった。また7-19cm,47-67cm,79-80cmの層準でCa濃度が高い傾向を示した。また花粉分析の結果,ヨモギ属が60-70%,アカザ科が15-25%を占め,総じてステップ植生に多い草本花粉が優占していた。また木本花粉ではカバノキ属が2-10%,マツ属複雑管束亜属が1-3%含まれていた。ヨモギ属/アカザ科比は0-45cmの上部で高いのに対して45-80cmで低い傾向を示した。またカバノキ属は最上部の0-6cmで増加する傾向を示した。現状の年代モデルに基づくと,17~18世紀の小氷期には乾燥環境であったのに対し,19-20世紀にはやや湿潤な環境に変化し,20世紀後半の温暖化に伴ってカバノキ属が増加したことが示唆される。

今後は14C年代測定に基づく同コアの年代モデルの構築を行い,モンゴル東部の古環境および植生変遷の復元を進める予定である。また,モンゴル北西部サンギンダライ湖をはじめ,モンゴル南部~北部,中国北東部など,周辺の花粉記録とも照らし合わせ統合的に比較する予定である。