日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS12-P07] アナトリア地域における完新世の環境・気候変動と文明の出現,発展,転換

*鈴木 健太1多田 隆治1多田 賢弘1山田 桂2香月 興太3唐 双寧2佐竹 渉1、Şahin Hilal4、Küçükarslan Nurcan1、Sayhan Sencer5、Arıkan Bülent 4、松村 公仁6、大村 幸弘6,1、松井 孝典1 (1.千葉工業大学、2.信州大学、3.島根大学、4.イスタンブール工科大学、5.アヒ エブラン大学、6.アナトリア考古学研究所)

キーワード:アナトリア、完新世、カマン・カレホユック、エスキ・アジュギョル

現在のトルコ共和国の大部分を占めるアナトリアは,農耕牧畜,金属製錬,都市形成といった人類史における大転換が世界で最も早く始まった地域のひとつであり,ヒッタイト帝国やオスマン帝国等の文明がほとんど途切れなく誕生・盛衰した地域でもある.アナトリア地域は,北半球中緯度域に位置し,偏西風や熱帯収束帯の位置変化による気候帯のシフトが顕著な地域でもある.そのため,そうした気候のシフトがアナトリア地域における民族移動,生活様式の変化,技術革新と関連する可能性がある.
 千葉工業大学地球学研究センターでは,アナトリア地域における生活様式や物質利用・製作・加工技術の変化、文明の転換と環境・気候変化の関係性を明らかにするために,高精度・高解像度な時間軸および遺跡内~遺跡周辺~広域的環境・気候変動の相互対比の確立を目的として,2022年度からアナトリア地域での調査を開始した.これまでのところ遺跡内の調査のために前期青銅器時代までの遺構が発掘で確認されているカマン・カレホユック遺跡を主な研究対象としている.また、過去の地域的気候・環境復元のために遺跡近傍の湿地など,アナトリアの広域的気候・環境変動復元のために中央アナトリアの火口湖跡であるEski Acigolや現火口湖のNar湖などでの掘削を実施及び予定している.
2022年度からカマン・カレホユック遺跡での発掘調査に参加し,前期青銅器時代の炉跡の使用目的の解明(佐竹 他,H-QR05),前期青銅器時代から鉄器時代のゴミ堆積物の層序復元とその構成物に基づいた遺跡内での生活様式や物質利用の変化の復元(多田賢 他,H-QR05)を通じて,前期青銅器時代以降の銅、青銅、鉄など金属の精錬や加工技術の進化を解明する研究を行っている.更に2022,2023年度にカマン・カレホユック遺跡近傍の湿地跡で陸上掘削を行って過去4800年間の局所的古環境復元を(鈴木 他,H-QR05),2023年度にEski Acigolで陸上掘削を行い,過去~5000年間の広域的古気候・古環境変動復元(多田隆 他,H-QR05)を行っている.本発表ではこれまでの研究の概要と,今後の研究の展望について紹介する.