日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 大気電気学:大気電気分野の物理現象解明から減災への応用まで

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:菊池 博史(国立大学法人 電気通信大学)、鴨川 仁(静岡県立大学グローバル地域センター)

17:15 〜 18:45

[MIS13-P02] 金沢近海での耐雷ドローンを用いての冬季雷の電磁的観測で得られた波形のスペクトログラム解析

*石山 文彦1、長尾 篤1、枡田 俊久1、丸山 雅人1 (1.日本電信電話株式会社)

我々は、2021 年より、石川県内灘町において、ドローンを用いての冬季雷の電磁的観測実験を進めてきている。 具体的には、日本海海上の雷雲に向けて耐雷構造を付加したドローンを飛ばし、雷雲下でドローンから 200m 長の導電性ワイヤーを投下し、このワイヤーをプローブとして、電磁的な冬季雷観測を行っている。 2022 年 2 月の観測では、10 Hz のサンプリング周波数を用い、パルス状の波形を複数観測した。この周波数帯での観測ではパルス状波形の詳細が得られなかったことから、2022 年 12 月からの観測では、様々なサンプリング周波数を用い、試行錯誤的に観測を行った。 その結果、2022 年 12 月 22 日と 2023 年 2 月 14 日に、電磁パルス波形をそれぞれ一つ取得することができた。それぞれのサンプリング周波数は、 1 kHz と 1 MHz とであった。こうして得られた電磁波形を、我々が提案している独自の非線形時間周波数解析手法を用いて解析し、スペクトログラム表示したところ、両者にパルス列構造が存在することを発見した。前者は 200 Hz を中心とする、10 波長程度で減衰する波形によるパルス列であり、後者は 40 kHz を中心とする、半波長程度で減衰する波形によるパルス列となっていた。半波長で減衰する、強い減衰波形については、1999 年にマレーシアのクアラルンプールで行った雷観測実験で得られた雷サージ波形でも得られていることから、今回得られた波形との間で、何かしらの関係があるものと考えられる。また、周波数が大きく異なる2つの領域で共通にパルス列構造が観測されたことから、今回用いなかった周波数領域においても、同様のパルス列構造が得られる可能性があり、この場合、電磁パルス列にフラクタル的な構造が存在することを示唆する。ただし、今回観測された波形は、別個に得られたものであることから、両者の時間的関係性などについては知見がない。そこで、両者の周波数帯においての同時測定などの追加試験が必要なものと考えられる。なお、我々が提案している非線形時間周波数解析手法は、フーリエ解析などの従来の解析手法を統合的に体系化したものの数値実装になっていることから、これに特定の機能制限を与えて個別に数値実装することにより、フーリエ解析や線形予測法といった、従来の信号解析手法そのものとして用いることもできる。機能制限しないことにより、従来手法による時間周波数分解能の理論限界を超えることができ、これができたことにより、上記パルス列構造を発見することができている。