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[MIS18-08] 水蒸気から氷への多段階核生成モデル
キーワード:核生成、水、氷、凝縮
気体から固体への相変化について, 基板や不純物上に凝縮する不均質核生成では過飽和状態ではすぐに固化・結晶化が起きるが,均質核生成の場合には大きく描像が異なる。たとえば水や鉱物など,三重点以下で結晶化が期待される温度でも,過冷却液滴の生成が観測されている1-4)。特に水に関しては高層大気中において-40℃までの過冷却水滴が観測されているが、その発生メカニズムは未だよく分かっていない。まず熱力学的に自由エネルギーの高い相が出現し,その後に安定相が出現する現象はオストワルドの段階則と呼ばれており, 実験や分子動力学シミュレーションからもその様子が得られているが、このような非平衡状態における凝縮・結晶化過程を定量的に扱う理論モデルが乏しい現状にある。本研究では気相からの凝縮核生成と過冷却液滴の結晶化過程を考慮した理論モデルを用いて, 水蒸気の多段階の核生成について調べた。
水蒸気の凝縮核生成については、核生成実験や分子動力学計算から提案された精度の高い核生成理論モデル(SPモデルと呼ばれる)を用いた5)。一方、過冷却水滴の結晶化過程については, 近年提案された、さまざまな冷却速度下での過冷却水滴の結晶化温度の実験結果を統一的に説明する結晶化モデルを用いた6)。この凝縮核生成と過冷却水滴の結晶化を記述する2つのモデルを組み合わせて理論計算を行うことにより, 水蒸気の冷却過程の中で得られるガスからの凝縮温度、過冷却水滴のサイズ、および結晶化温度等を求めることができる。冷却率が大きい場合には凝縮温度と結晶化温度は共に減少し, 水滴および氷晶サイズも小さくなる。幅広い冷却率の範囲において, 水蒸気は凝縮してすぐには結晶化せず, まず過冷却水滴が生成した後, さらに冷却したのち固化する結果が得られた。
参考文献
1) Manka et al. Phys. Chem. Chem. Phys. 14(2012)4505
2) Kimura et al. Cryst. Growth Des.12(2012)3278
3) Ishizuka et al. The Astrophys. J.803(2015) 88
4) Tanaka et al. Phys. Rev. E 96(2017) 022804
5) Angelil et al. J.Chem.Phys. 143(2015),064507
6) Tanaka and Kimura, Phys. Chem. Chem. Phys., 21(2019) 2410
水蒸気の凝縮核生成については、核生成実験や分子動力学計算から提案された精度の高い核生成理論モデル(SPモデルと呼ばれる)を用いた5)。一方、過冷却水滴の結晶化過程については, 近年提案された、さまざまな冷却速度下での過冷却水滴の結晶化温度の実験結果を統一的に説明する結晶化モデルを用いた6)。この凝縮核生成と過冷却水滴の結晶化を記述する2つのモデルを組み合わせて理論計算を行うことにより, 水蒸気の冷却過程の中で得られるガスからの凝縮温度、過冷却水滴のサイズ、および結晶化温度等を求めることができる。冷却率が大きい場合には凝縮温度と結晶化温度は共に減少し, 水滴および氷晶サイズも小さくなる。幅広い冷却率の範囲において, 水蒸気は凝縮してすぐには結晶化せず, まず過冷却水滴が生成した後, さらに冷却したのち固化する結果が得られた。
参考文献
1) Manka et al. Phys. Chem. Chem. Phys. 14(2012)4505
2) Kimura et al. Cryst. Growth Des.12(2012)3278
3) Ishizuka et al. The Astrophys. J.803(2015) 88
4) Tanaka et al. Phys. Rev. E 96(2017) 022804
5) Angelil et al. J.Chem.Phys. 143(2015),064507
6) Tanaka and Kimura, Phys. Chem. Chem. Phys., 21(2019) 2410