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[MIS18-P04] 結晶表面に吸着した移動性不純物による結晶成長阻害の数値計算
キーワード:結晶成長、不純物、成長阻害作用、数値計算、フェーズフィールド法
結晶成長は,わずかな不純物の存在によって大きく影響を受ける。これは,結晶表面に吸着した不純物粒子が,結晶表面のステップの前進を阻害することによって引き起こされると考えられている。代表的なステップ前進阻害機構として,ピン留め機構が提案されている [1]。ピン留め機構では,吸着不純物はその吸着位置においてステップ前進を阻害する。その結果,ステップは曲げられ,前進速度が低下する。これまでにも,不純物による成長阻害効果の多くがピン留め機構によって説明されてきた[2-4]。ピン留め機構に関する従来の理論的研究の多くは,結晶表面に吸着した不純物は再び脱離するまで吸着した場所から動かないと想定していた(不動性不純物)。しかし、実際には,吸着不純物は結晶表面上を移動しうる(移動性不純物)。吸着不純物の移動は,結晶成長阻害効果に影響を及ぼすことが Voronkov and Rashkovich によって理論的に指摘されている[5]。彼らは、ステップ近傍での吸着不純物濃度がステップ前進阻害効果に大きく寄与するとして、吸着不純物の表面拡散を考慮し、湾曲したステップの “ポケット” に掃き集められた不純物(不純物クラスター)がステップ前進阻害効果に影響を及ぼすと主張した。しかし,彼らは実際に不純物が掃き集められる過程を再現しておらず,不純物クラスターが結晶成長に及ぼす影響はよくわかっていない。
本研究では、移動性不純物によるピン留め機構を数値的に再現することで,吸着不純物の移動が結晶成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。数値モデルには,フェーズフィールド法に基づいたステップ・ダイナミクスの数値計算法を用いた[6,7]。吸着不純物は,テラス上では等方的に表面拡散するが,ステップ近傍では前進するステップから遠ざかる向きに移動することを考慮した。ステップ近傍に不純物が吸着したときの結晶表面の自由エネルギーを計算し,自由エネルギーが減少する向きに拡散しやすくなるように各向きの移動確率を求め、モンテカルロ法により不純物の表面拡散を扱った。数値計算の結果、ステップが吸着不純物を押しのけながら前進する様子を再現することができた。また,吸着不純物によるピン留めにより湾曲したステップの凹みに不純物が掃き集められ,不純物クラスターを形成する様子が確認された。講演では,ステップによる不純物の掃き出しや不純物クラスターの形成が結晶成長速度に及ぼす影響について述べる.
[1] N. Cabrera and D. A. Vermilyea, New York (1958) 393.
[2] S. Choudhury and R. Jayaganthan, Materials Chemistry and Physics 109 325–333.
[3] J. P. Lee-Thorp, A. G. Shtukenberg, and R. V. Kohn, Crystal Growth & Design 20 (2020) 1940–1950.
[4] J. F. Lutsko et al., Crystal Growth & Design 14 (2014) 6129–6134.
[5] V. V. Voronkov and L. N. Rashkovich, Journal of Crystal Growth 144 (1994) 107–115.
[6] H. Miura, Crystal Growth & Design 16 (2016) 2033–2039.
[7] H. Miura, Crystal Growth & Design 15 (2015) 4142–4148.
本研究では、移動性不純物によるピン留め機構を数値的に再現することで,吸着不純物の移動が結晶成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。数値モデルには,フェーズフィールド法に基づいたステップ・ダイナミクスの数値計算法を用いた[6,7]。吸着不純物は,テラス上では等方的に表面拡散するが,ステップ近傍では前進するステップから遠ざかる向きに移動することを考慮した。ステップ近傍に不純物が吸着したときの結晶表面の自由エネルギーを計算し,自由エネルギーが減少する向きに拡散しやすくなるように各向きの移動確率を求め、モンテカルロ法により不純物の表面拡散を扱った。数値計算の結果、ステップが吸着不純物を押しのけながら前進する様子を再現することができた。また,吸着不純物によるピン留めにより湾曲したステップの凹みに不純物が掃き集められ,不純物クラスターを形成する様子が確認された。講演では,ステップによる不純物の掃き出しや不純物クラスターの形成が結晶成長速度に及ぼす影響について述べる.
[1] N. Cabrera and D. A. Vermilyea, New York (1958) 393.
[2] S. Choudhury and R. Jayaganthan, Materials Chemistry and Physics 109 325–333.
[3] J. P. Lee-Thorp, A. G. Shtukenberg, and R. V. Kohn, Crystal Growth & Design 20 (2020) 1940–1950.
[4] J. F. Lutsko et al., Crystal Growth & Design 14 (2014) 6129–6134.
[5] V. V. Voronkov and L. N. Rashkovich, Journal of Crystal Growth 144 (1994) 107–115.
[6] H. Miura, Crystal Growth & Design 16 (2016) 2033–2039.
[7] H. Miura, Crystal Growth & Design 15 (2015) 4142–4148.