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[MIS21-03] 温度依存高粘性流体の内部熱源熱対流の対流構造とスケーリング関係

キーワード:マントル対流、スケーリング関係、対流構造、内部熱源対流
惑星内部のマントルの流体運動の基本的な性質を調べるためにブシネスク流体の熱対流問題が古くから研究されている. この問題ではレイリー・ベナール対流に代表されるように, 下境界面からの加熱および上境界面からの冷却によって駆動される問題設定が主に取り扱われてきている. しかしながら, 惑星内部のマントル対流運動を考える上では, 内部熱源によって駆動される問題設定も重要である. 実際, 地球のコアマントル境界を通じた熱流は地球表面の熱流の 10 ~ 20% 程度であり, 地球の場合では内部発熱はコアからの加熱よりもマントル対流の主要な駆動力源である (Jaupart et al., 2015).
一方で, マントル物質のレオロジーを考慮して, 粘性が温度に依存する状況でのブシネスク熱対流問題が考察されている. 上下境界面からの加熱と冷却により駆動される温度依存粘性流体の熱対流は, 粘性の温度依存性の強さに応じて 3 つの対流構造に分類される (e.g., Solomatov, 1995). 粘性変化が小さい場合 (Small viscosity contrast [SVC] regime) では, 粘性一定の場合に近い対流構造となる. これに対して粘性の温度依存性が十分大きい場合 (Stagnant lid [ST] regime) には, 上側境界付近に流れがない層が形成され, 対流運動がその下側の層に制限される. 粘性の温度依存性の強さが中間的な場合 (Transitional [TR], または Sluggish lid regime) では, ST regime の対流解とは異なり, 上側境界付近が下層の対流運動に比べてゆっくりとした水平流が存在している. また, それぞれのレジームでのレイリー数, 粘性の温度依存性強度, および水平波長に対するヌッセルト数のスケーリング関係が理論的に見出され, 数値的に確認されている. 内部発熱がない場合は, どのレジームでもヌッセルト数がレイリー数の 1/3 乗の冪に従うことが知られている (Solomatov, 1995; Okuda and Takehiro, 2023).
内部熱源により駆動される温度依存粘性流体の熱対流問題は, 粘性の温度依存性が無い場合と十分に大きい場合についてのみ室内実験および数値計算により調べられている. スケーリング関係はどちらの場合も, 対流層の内部温度が内部発熱の大きさによって定義されるレイリー数 (Rayleigh-Roberts 数) の -1/4 乗に比例することが確認されている (e.g., Davaille and Jaupart, 1993; Grasset and Parmentier, 1998). しかしながら, 粘性の温度依存性の中間的な場合は詳しく調べられておらず, レジーム分類が吟味されていない.
そこで本研究では, 2 次元熱対流数値モデルを用いて, 粘性の温度依存性の強さやレイリー数を変えて数値計算を多数行い, 内部熱源のみによって駆動される熱対流の構造やスケーリング関係がどのように変化するかを調べる. 内部熱源は一様に分布しているとし, 温度に対して指数関数的に変化する粘性を仮定する. 温度依存性が小さい時 (SVC regime) は, 粘性一定の場合と同様に対流内部温度がレイリー数の -1/4 乗に比例している. 粘性の温度依存性が十分に大きい場合 (ST regime) でも先行研究の結果と整合的なレイリー数の -1/4 乗のスケーリング関係に従っている. これらの SVC regime と ST regime の間には, 対流内部温度が SVC および ST regime よりもレイリー数の大きな冪に従っている新たなレジームが見出される.
一方で, マントル物質のレオロジーを考慮して, 粘性が温度に依存する状況でのブシネスク熱対流問題が考察されている. 上下境界面からの加熱と冷却により駆動される温度依存粘性流体の熱対流は, 粘性の温度依存性の強さに応じて 3 つの対流構造に分類される (e.g., Solomatov, 1995). 粘性変化が小さい場合 (Small viscosity contrast [SVC] regime) では, 粘性一定の場合に近い対流構造となる. これに対して粘性の温度依存性が十分大きい場合 (Stagnant lid [ST] regime) には, 上側境界付近に流れがない層が形成され, 対流運動がその下側の層に制限される. 粘性の温度依存性の強さが中間的な場合 (Transitional [TR], または Sluggish lid regime) では, ST regime の対流解とは異なり, 上側境界付近が下層の対流運動に比べてゆっくりとした水平流が存在している. また, それぞれのレジームでのレイリー数, 粘性の温度依存性強度, および水平波長に対するヌッセルト数のスケーリング関係が理論的に見出され, 数値的に確認されている. 内部発熱がない場合は, どのレジームでもヌッセルト数がレイリー数の 1/3 乗の冪に従うことが知られている (Solomatov, 1995; Okuda and Takehiro, 2023).
内部熱源により駆動される温度依存粘性流体の熱対流問題は, 粘性の温度依存性が無い場合と十分に大きい場合についてのみ室内実験および数値計算により調べられている. スケーリング関係はどちらの場合も, 対流層の内部温度が内部発熱の大きさによって定義されるレイリー数 (Rayleigh-Roberts 数) の -1/4 乗に比例することが確認されている (e.g., Davaille and Jaupart, 1993; Grasset and Parmentier, 1998). しかしながら, 粘性の温度依存性の中間的な場合は詳しく調べられておらず, レジーム分類が吟味されていない.
そこで本研究では, 2 次元熱対流数値モデルを用いて, 粘性の温度依存性の強さやレイリー数を変えて数値計算を多数行い, 内部熱源のみによって駆動される熱対流の構造やスケーリング関係がどのように変化するかを調べる. 内部熱源は一様に分布しているとし, 温度に対して指数関数的に変化する粘性を仮定する. 温度依存性が小さい時 (SVC regime) は, 粘性一定の場合と同様に対流内部温度がレイリー数の -1/4 乗に比例している. 粘性の温度依存性が十分に大きい場合 (ST regime) でも先行研究の結果と整合的なレイリー数の -1/4 乗のスケーリング関係に従っている. これらの SVC regime と ST regime の間には, 対流内部温度が SVC および ST regime よりもレイリー数の大きな冪に従っている新たなレジームが見出される.