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[MIS22-06] 日向灘・種子島沖・喜界島沖海底泥火山表層堆積物中の流体の起源

キーワード:海底泥火山、喜界島、間隙水、日向灘、種子島
世界各地の大陸縁辺に分布する海底泥火山は,高間隙水圧を持った堆積物が,海底表層まで上昇し噴出した地形であり,地下深部の流体を放出している.日本近海では紀伊半島沖熊野海盆と種子島沖に広く分布していることが知られている.近年の詳細な地形調査で日向灘,喜界島沖にも海底泥火山が分布していることが確認されている.2023年8月に行われた研究調査船「白鳳丸」のKH-23-4次航海ではほぼ未調査域である日向灘と喜界島沖の泥火山群を中心に調査が行われ,そのうち日向灘のHyMV5-1, HyMV9, HyMV23, HyMV24, HyMV27,種子島沖のMV04,TK12,喜界島沖のKSK0, KSK2, KSK3, KNK1, KNK2と番号が付けられた海底泥火山から堆積物コアを採取した.本研究では,採取した堆積物から間隙水を抽出し,間隙水中のCl⁻濃度および水素・酸素安定同位体比(δD, δ18O)を測定することで,日向灘・種子島沖・喜界島沖海底泥火山の表層堆積物中の流体の起源について考察した.
間隙水のCl⁻濃度は,すべての泥火山において深度が深くなるにつれ低下し,最深部では海水の値を示す表層のCl⁻濃度より数%~70%ほど低下した.海水(Cl⁻濃度:約 550 mM)より低いCl⁻濃度は,海水由来の間隙水に淡水が加わり希釈されていることを示す.また深度方向へのCl⁻濃度の低下は,深部で淡水が加わった水が海底面近くまで上昇していることを示す.特に喜界島沖のKSK3, KNK2のコア最下部の間隙水のCl⁻濃度は,海水の70%, 75%分(170 mM, 130 mM)低下していた.一方,KSK0, KNK1, MV4, HyMV5-1, HyMV24は数%の低下にとどまった.これらの泥火山は深部からの水の供給がなく活動を停止していると考えられる.
間隙水のδDとδ18Oは,活動を停止したと考えられる泥火山を除き,全ての泥火山においてCl⁻濃度の低下とともにδD値が低くδ18O値は高くなる強い相関を示した.この同位体比の傾向は,粘土鉱物の脱水由来の水の特徴である.代表的な粘土鉱物の脱水反応としてスメクタイト-イライト反応が挙げられる.この反応は60~160℃の条件下で起こると報告されており,種子島沖で報告されている地温勾配(25~50 ℃/km)が喜界島沖や日向灘でも同じだと仮定すると,粘土鉱物の脱水反応は地下数 kmで起こったと考えられる.
各泥火山のCl⁻濃度の鉛直分布の違いは流体の移流速度の違いによるものと考えられる.移流拡散方程式を用いて移流速度を求めたところ0.01~5 cm/yとなった.移流速度と海域ごとの関連性はないが,傾向として喜界島沖は泥火山ごとの活動度の差が大きく,日向灘は他海域に比べ平均的に移流速度が大きい値を示した.粘土鉱物の脱水による水の特徴を示した泥火山の移流速度はKSK2, KNK1 < TK12 < HyMV23 < KSK3 < HyMV27 < KNK2の順で大きかった.
間隙水のCl⁻濃度は,すべての泥火山において深度が深くなるにつれ低下し,最深部では海水の値を示す表層のCl⁻濃度より数%~70%ほど低下した.海水(Cl⁻濃度:約 550 mM)より低いCl⁻濃度は,海水由来の間隙水に淡水が加わり希釈されていることを示す.また深度方向へのCl⁻濃度の低下は,深部で淡水が加わった水が海底面近くまで上昇していることを示す.特に喜界島沖のKSK3, KNK2のコア最下部の間隙水のCl⁻濃度は,海水の70%, 75%分(170 mM, 130 mM)低下していた.一方,KSK0, KNK1, MV4, HyMV5-1, HyMV24は数%の低下にとどまった.これらの泥火山は深部からの水の供給がなく活動を停止していると考えられる.
間隙水のδDとδ18Oは,活動を停止したと考えられる泥火山を除き,全ての泥火山においてCl⁻濃度の低下とともにδD値が低くδ18O値は高くなる強い相関を示した.この同位体比の傾向は,粘土鉱物の脱水由来の水の特徴である.代表的な粘土鉱物の脱水反応としてスメクタイト-イライト反応が挙げられる.この反応は60~160℃の条件下で起こると報告されており,種子島沖で報告されている地温勾配(25~50 ℃/km)が喜界島沖や日向灘でも同じだと仮定すると,粘土鉱物の脱水反応は地下数 kmで起こったと考えられる.
各泥火山のCl⁻濃度の鉛直分布の違いは流体の移流速度の違いによるものと考えられる.移流拡散方程式を用いて移流速度を求めたところ0.01~5 cm/yとなった.移流速度と海域ごとの関連性はないが,傾向として喜界島沖は泥火山ごとの活動度の差が大きく,日向灘は他海域に比べ平均的に移流速度が大きい値を示した.粘土鉱物の脱水による水の特徴を示した泥火山の移流速度はKSK2, KNK1 < TK12 < HyMV23 < KSK3 < HyMV27 < KNK2の順で大きかった.