17:15 〜 18:45
[MIS23-P06] 収束プレート境界ダイナミクス:動力学モデリングで何がどこまで再現できるか?
キーワード:動力学モデリング、高圧変成岩上昇、プレート境界岩、I2VIS コード
造山帯に産する高圧(超高圧)変成岩は沈み込み帯における物理的、化学的プロセスの重要な記録媒体である。エクロジャイト化した玄武岩質の海洋地殻は一般的にマントルかんらん岩より高密度であるが、収束プレート境界のテクトニックなプロセスによって、その断片が変成岩体として地殻浅所まで移動することがある。マントルかんらん岩よりも高密度な変成岩の造山帯表層付近までの上昇機構のアイデアは、チャネルフロー、ダイアピル上昇、ウェッジ絞り出し、コーナーフローなど過去40年以上の間に様々なモデルが提唱されてきた。
プレート収束域の物質フローの研究において、ブレイクスルーの1つにI2VISコード(Gerya and Yuen, 2003)の登場と同コードのプレート収束域のダイナミクスの解析への応用が上げられる。近年では、パーソナルコンピュータでも同コードを用いたジオダイナミック(動力学)モデリングによって地質学・岩石学・年代学によって解釈された過去のプレート収束域の物質フローの簡易的な検証が可能となった。例えばMorita, Tsujimori et al. (2022) は大陸衝突帯のダイナミクス、とりわけ時間スケールの問題に対し、従来の変成岩岩石学と地質年代学に加え、2次元動力学モデリングを用いることで、天然の変成岩研究からより確からしい過去のダイナミクスを読み解く新しい雛形を提案している。また、I2VISコードの普及によって計算機実験により示唆される未解明のプロセスの証拠を天然において探す「モデリングに触発された研究」等も行われるようになっている。しかしながら、モデリングが再現・抽象する計算結果(ヴァーチャルな世界)と天然の地質記録には様々な矛盾と乖離も存在する(例えば、Kerswell et al., 2023)。既に広く普及した熱力学的相平衡モデリング(シュードセクション法など)と同様に、基礎的なパラメータや計算アルゴリズムの基礎を理解をせず、使用方法を誤ると、都合の良いアドホックな解釈を大量に生み出すリスクが存在する。
本発表ではプレート収束域の物質フローの解明に対し、動力学モデリングは何がどこまでできるのか、そして何がわかっておらずどのような取り組みが求められているのかを我々が行っている計算機実験及び地質試料の解析の結果等を交えながら紹介する。
プレート収束域の物質フローの研究において、ブレイクスルーの1つにI2VISコード(Gerya and Yuen, 2003)の登場と同コードのプレート収束域のダイナミクスの解析への応用が上げられる。近年では、パーソナルコンピュータでも同コードを用いたジオダイナミック(動力学)モデリングによって地質学・岩石学・年代学によって解釈された過去のプレート収束域の物質フローの簡易的な検証が可能となった。例えばMorita, Tsujimori et al. (2022) は大陸衝突帯のダイナミクス、とりわけ時間スケールの問題に対し、従来の変成岩岩石学と地質年代学に加え、2次元動力学モデリングを用いることで、天然の変成岩研究からより確からしい過去のダイナミクスを読み解く新しい雛形を提案している。また、I2VISコードの普及によって計算機実験により示唆される未解明のプロセスの証拠を天然において探す「モデリングに触発された研究」等も行われるようになっている。しかしながら、モデリングが再現・抽象する計算結果(ヴァーチャルな世界)と天然の地質記録には様々な矛盾と乖離も存在する(例えば、Kerswell et al., 2023)。既に広く普及した熱力学的相平衡モデリング(シュードセクション法など)と同様に、基礎的なパラメータや計算アルゴリズムの基礎を理解をせず、使用方法を誤ると、都合の良いアドホックな解釈を大量に生み出すリスクが存在する。
本発表ではプレート収束域の物質フローの解明に対し、動力学モデリングは何がどこまでできるのか、そして何がわかっておらずどのような取り組みが求められているのかを我々が行っている計算機実験及び地質試料の解析の結果等を交えながら紹介する。