日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2024年5月29日(水) 13:45 〜 15:00 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:大園 真子(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、道家 涼介(弘前大学大学院理工学研究科)

14:45 〜 15:00

[MTT37-05] 稠密GNSS観測網の品質管理手法の紹介

*池田 将平1,2、伊田 裕一1,2、野村 宏利1,2、近藤 徹1,2、大西 健広1,2 (1.ソフトバンク株式会社、2.ALES株式会社)

キーワード:GNSS、LOS、NLOS、機械学習

日本では人口減少による人手不足の影響により、昨今は農業・建設等の多くの分野で自動化の流れが進んでいる。自動化の達成に向けて必要となる技術の一つに、自己位置を高精度で推定する技術が挙げられ、GNSSによる高精度測位サービスが注目されている。ソフトバンク株式会社では全国3,300カ所以上に設置した独自基準点を用いた高精度測位サービス「ichimill」を展開し、RTK測位に必要な補正情報の配信を行っている。

サービスの品質を確保するには3,300カ所以上の独自基準点を定期的かつ網羅的に確認する必要がある。特に基準点の周辺環境の変化が及ぼす観測値の精度劣化を重要視している。

観測値の精度劣化の要因の一つに見通し線(LOS, Line Of Sight)が挙げられる。観測値の精度劣化が無い場合は衛星-アンテナ間が見通せる状態(LOS)であるが、衛星-アンテナ間に建造物及び植生等がある場合は見通し線が遮られる状態(NLOS, Non-Line Of Sight)となる。NLOSとなった場合、受信した観測値のC/Nが低下したり、受信不能となったりする。従来は基準点上空の写真から画像認識を行うことによって、LOS/NLOSを判定していた。ただし、設置したカメラの画像から正確な方位角・仰角を把握することが困難であり、不正確な判定となっていた。また、正確な判定を行うには、基準点の稼働を停止してアンテナ上空の写真を撮影する必要があり、現地調査のコスト面ならびに基準点の稼働率を高く保つ観点で課題があった。そこで、独自基準点の観測データから得られるC/Nと衛星の方位角・仰角から機械学習を用いてLOS/NLOSの判定を行い、上記の問題を解決した。この判定を全ての基準点を対象に定期的に行い、基準点の品質を監視している。

また、上記の見通し線以外の項目に関する、異なる監視手法の研究開発も行っており、高水準のサービスを提供できるよう努めている。