日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2024年5月29日(水) 15:30 〜 16:45 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

15:30 〜 15:45

[MTT37-06] 民間独自基準点データを用いたGNSS可降水量と鉛直構造推定

*藤田 実季子1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:GNSS気象、水蒸気

日本のGNSS観測網は国土地理院により運用され(電子基準点、全国1,300点超)、一部の観測点で推定された大気遅延量または可降水量は、数値予報へとデータ同化されている。その一方で、2019年11月以降、ソフトバンク株式会社により、測位サービスの高度化を目的とした超多点(全国3,300点超)の独自GNSS観測網(以下、ソフトバンク網)の運用が開始された。本研究では、このソフトバンク網のデータを利用し、九州地方大雨時のGNSS可降水量の詳細分布の解析とトモグラフィ手法を用いた鉛直構造の推定を行った。
対象期間中、九州北部には前線が停滞し8月12日には熊本県と福岡県で線状降水帯が発生した。周辺のGNSS可降水量は70mmを超え、統計的に非常に極端な可降水量の高値(例えば、五島列島では79.0mm)を記録した観測点が複数存在した。このような高可降水量を高頻度で観測していた地点を調査したところ、想定よりも局所的に点在していることが、稠密観測網を用いたことで明らかとなった。トモグラフィによる水蒸気鉛直構造の推定では、下層水蒸気の変動のみならず高度2-3km付近の水蒸気流入も顕著であった。
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社および ALES株式会社より提供を受けたものを使用した。