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[MTT37-P09] 日本における2つの稠密GNSS観測ネットワークで観測された2024年能登半島地震後の電離圏擾乱の特徴について
キーワード:稠密GNSS観測ネットワーク、2024年能登半島地震、伝搬性電離圏擾乱、大気波動、磁力線、全電子数
地球の電離圏は、太陽からの極端紫外線(EUV)放射と磁気圏からの高エネルギー粒子の降り込みによって超高層大気が部分的に電離することで形成される。電離圏電子密度の時間・空間変動は、太陽フレアのような太陽活動と気象現象、地震、津波、火山噴火などに伴う下層大気の擾乱の両方によって引き起こされる。このような電離圏の電子密度変動は、衛星測位や航法に用いられる電磁波の伝搬に影響を与えるため、宇宙天気研究として電離圏擾乱の発生を監視・予測することは重要である。これまでの研究から同心円状の波構造を持つ伝搬性電離圏擾乱(TID)が、大地震や火山噴火の発生から約8分後に出現することはよく知られている[e.g., Hebert et al., 2020; Shinbori et al., 2022]。このTIDの発生機構は、地震や火山噴火に伴う下層大気の上下運動によって発生する音波による熱圏の中性大気振動である。2024年能登半島沖地震(マグニチュード7.6)では、日本における2つのGNSS観測網(GEONETとソフトバンク)から得られた全電子数(TEC)の2次元マップにおいて、日本上空で同心円状の波構造を持つTIDの出現が確認された。本研究では、0.02度×0.02度の高空間分解能をもつGNSS-TECデータを解析することにより、2024年能登半島地震後に観測されたTIDの特徴を明らかにする。能登半島地震当日の太陽風と地磁気の状況を調べるために、NASA CDAwebと京都大学から提供されたOMNIデータと地磁気指標(AEとDst)を使用した。今回の解析では、15 分間のハイパスフィルタ処理(デトレンド処理)されたTECデータを用い、このTECデータから3分間の実行中央値を差し引くことで、地震に関連するTIDよりも伝播速度がはるかに遅いTIDを除去した。その結果,地震発生から約8.5分後に震央付近に同心円状の波構造を持つTIDが現れ,波構造は時間とともに放射状に拡大した。南方向へ伝搬するTIDの振幅は北方向へ伝搬するTIDの振幅よりもはるかに大きかった。日本上空の磁力線の伏角を考慮すると、南方向へ伝搬する音波の波数ベクトルと磁力線のなす角が小さくなるため、この場合、電離圏内に存在する荷電粒子は磁力線に沿って移動しやすくなる。そのため、TEC変動の振幅は震源の南側で大きくなる。地震に伴うTEC変動の初動は、能登半島周辺の震源の空間分布にほぼ沿って発生していた。この結果は,TEC変動が地震に伴う地盤や海面上昇によって発生した音波によって駆動されたことを示唆している。また、TECの距離-時間プロットから,TIDの伝搬速度は約1,000m/sと推定された。この伝搬速度は高度550kmの熱圏を伝搬伝搬する音波の伝搬速度とほぼ一致する。
謝辞
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。
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本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。