[M-TT38] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

[MTT38-07] 津波から励起される各種大気波動の数値シミュレーション: Lamb 波・重力波・音波

*中島 健介¹ (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード：大気ラム波、インフラサウンド、音波、重力波、津波、津波早期警戒

背景
津波発生時には波源域から各種の大気波動（ラム波、重力波、音波）が励起される。これらのうちラム波は励起の機構と規模が比較的明確に理解できるが、それら以外、特に音波の励起の様相には議論の余地が多々ある。また音波は励起後の伝播が波線理論で議論されてきたが、これには初動の符号、継続時間、振動数などの情報が直接には含まれない。しかし、音波もまた津波に関して有意な情報を含んでいる可能性があり、より詳細な吟味が必要と考えられる。そこで、この発表では圧縮性大気の運動方程式を数値的に解き、津波励起大気波動の様相を具体的に議論する。

方法
水平鉛直2次元の圧縮性大気の線形化運動方程式を数値的に解く。基本場としては静止大気を仮定し、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏を含む標準的な温度構造を想定する。大気下面は津波を記述する浅水方程式と結合させ、海底に局在した短いライズタイムの断層偏位を与える。この系では海洋を伝播する津波および津波と強く結合した大気波動も生じるが、本発表では主に、津波より速く伝播する各種大気波動にもっぱら注目する。

結果
励起の最初期の様相は鉛直水平に等方的に伝播する音波として認識されるが、時間の経過とともにラム波、重力波、音波に分かれる。すなわち、横向きに射出された波動は周期数分のラム波、および、成層圏と地面の間をバウンスする比較的短周期の音波に分かれる。また、上向きに射出された波動は周期数分以上で遅い位相速度の重力波、および、熱圏下部で転回して地面との間でバウンスする音波に分かれる。興味深い様相としては、成層圏で転回する音波の初動は波源に近いところで負になるが遠方でも比較的パルス的構造を保つ一方、熱圏下部で転回する音波は比較的長時間継続するハーモニックな波束として地面に届くことが注目される。これらの諸相については、発表当日に詳細に議論する。