日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ42] 海底マンガン鉱床の生成環境と探査・開発

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア総合研究センター)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

17:15 〜 18:45

[MZZ42-P03] 東太平洋クラリオン・クリッパートン断裂帯周辺における堆積物特性

*山岡 香子1、Travis Washburn1、井口 亮1鈴木 淳1、石谷 哲寛2、村上 知里3、津根 明3 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.株式会社日本海洋生物研究所、3.深海資源開発株式会社)

キーワード:マンガン団塊、深海堆積物、金属

我が国では1987年に深海資源開発株式会社(DORD)がハワイ南東沖のクラリオン・クリッパートン断裂帯(CCZ)において、国際海底機構(ISA)からマンガン団塊国際鉱区を取得し、2001年からDORD西鉱区内の高密度分布域(HAA; High Abundance Area)及び保護参照区域(PRZ; Preservation Reference Zone)、加えて2021年には特定環境関心区域(APEI-10; Areas of Particular Environmental Interest)において、環境ベースライン調査を実施している。本研究では、2021年度調査により取得された堆積物の特性について報告する。
堆積物試料は、PRZの7地点(21PRMC06〜21PRMC12)、HAAの1地点(21MNMC31)、APEI-10の1地点(21EIMC02)から、マルチプルコアラーを用いて採取された。水深は5100〜5400 mで、堆積物はいずれも遠洋性粘土からなる。ISA環境ガイドラインに従い、コア試料は7層(0-1, 1-2, 2-3, 3-5, 5-8, 8-12, 12-20 cm)に分割し、各層について含水率、粒度組成、全有機炭素(TOC)、全窒素(TN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、生物源オパールの分析を行なった。PRZの7地点については、金属濃度の分析も実施した。
得られた堆積物特性を比較すると、PRZとHAAにおいては、斜面から採取された21PRMC11を除き、いずれの項目も類似した傾向を示した。一方APEI-10では、CaCO3がやや多く、含水率、TOC、TN、オパールがやや低い特徴を示した。TOCは全地点で3〜6 mg/gであり、これまでDORD西鉱区から得られた値と整合的であった。PRZにおける金属については、21PRMC11を除いて深度分布に大きな違いはなく、全地点の平均値はCr=56 µg/g、Mn=4500 µg/g、Ni=170 µg/g、Cu=380 µg/g、Zn=140 µg/g、As=8.3 µg/g、Cd=0.18 µg/g、Pb=24 µg/g、Hg=30 ng/gであった。分布の傾向は、マンガン酸化物と同調する元素(Mn, Ni, Cu, Zn, Cd, REE)と、粘土鉱物などのアルミノケイ酸塩鉱物と同調する元素(Cr, Fe, As, Pb)に分けられた。過年度調査の結果からPRZはHAAに比べてMn, Cu, Zn, Pbに富む傾向が見いだされ、本研究で得られたPRZの金属濃度とも整合的であった。水銀濃度は、全地点で深度に沿った減少傾向を示し、TOCと弱い相関を示すことから有機物と同調的に分布することが示唆された。