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[MZZ42-P06] メタバーコーディング解析による北西太平洋に位置する海山における真核生物の多様性の解明
キーワード:メタバーコーディング解析、コバルトリッチクラスト、真核生物、メイオベントス
コバルトリッチクラストは、コバルト、ニッケル、マンガンなどが豊富に含まれる鉱物資源であり、北西太平洋域の海底に点在する海山に分布している。近年、海底資源鉱物の開発への注目が高まり、開発に伴う周辺環境への影響も懸念されている。公海上の海底資源鉱物の探査や開発を管理する国際海底機構(International Seabed Authority: ISA)は資源開発の影響を最小限にするために環境ガイドラインを定めている。環境調査項目の1つとしてメイオベントスを含む底生生物を挙げている(ISBA/25/LTC/6/Rev.3)。しかし、コバルトリッチクラストが存在する低緯度で海洋生産性が低い海域では、大型生物と比べてメイオベントスの生息密度が低く、統計解析に十分な個体数を採取することは難しい。また、個体の同定は顕微鏡による作業に依存しており、メイオベントスの解析には時間が掛かる。近年、環境中のDNAを対象としたメタバーコーディング技術が深海の多様性解析に用いられるようになってきた。Kitahashi et al. (2020) は日本の鉱区内にある海山(JA06海山)において、個体の検鏡による解析とメタバーコーディング解析の結果を比較し、メタバーコーディング解析は、検鏡による解析よりも群集の空間変異をより詳細にとらえることができることを示している。
本研究では日本の鉱区内にある4つの海山(JA03, JA04, JA06, JA17)においてメタバーコーディング解析を行い、海山間、及び海山の地形(海山の平頂部と基部)による群集構造の変異を解析した。メタバーコーディング解析の結果、1,360,707リード、6,982 ASV(amplicon sequence variant)がメイオベントスを含む真核生物にアサインされた。出現したASV数の比較の結果、JA17海山では基部よりも平頂部でASV数が多かったが、基部の測点が1地点のみであるため統計的解析は行えなかった。また平頂部のみ比較すると有意ではないもののJA17海山は他の海山よりASV数が多かった(図1)。この結果は、赤道付近から北に向かって多様性が高くなる多様性の緯度勾配の一般則に当てはまる。多変量解析による真核生物の群集構造解析の結果、海山間に有意差が見られた(PERMANOVA, p<0.01)。群集構造の変異を可視化するため、主座標分析(Principal coordinate analysis: PCoA: PCoA)を行った(図2)。その結果、JA06海山とJA17海山では平頂部の群集構造が異なるが、基部では類似していた。また、地理的に近傍に位置しているにも関わらず、JA03海山とJA04海山の平頂部の群集構造は異なっていた。JA03海山では平頂部と基部の群集構造は類似していた。これらの結果から、海山の基部では類似した群集が存在する一方で、平頂部では独自の群集が存在することが示唆された。
本研究では日本の鉱区内にある4つの海山(JA03, JA04, JA06, JA17)においてメタバーコーディング解析を行い、海山間、及び海山の地形(海山の平頂部と基部)による群集構造の変異を解析した。メタバーコーディング解析の結果、1,360,707リード、6,982 ASV(amplicon sequence variant)がメイオベントスを含む真核生物にアサインされた。出現したASV数の比較の結果、JA17海山では基部よりも平頂部でASV数が多かったが、基部の測点が1地点のみであるため統計的解析は行えなかった。また平頂部のみ比較すると有意ではないもののJA17海山は他の海山よりASV数が多かった(図1)。この結果は、赤道付近から北に向かって多様性が高くなる多様性の緯度勾配の一般則に当てはまる。多変量解析による真核生物の群集構造解析の結果、海山間に有意差が見られた(PERMANOVA, p<0.01)。群集構造の変異を可視化するため、主座標分析(Principal coordinate analysis: PCoA: PCoA)を行った(図2)。その結果、JA06海山とJA17海山では平頂部の群集構造が異なるが、基部では類似していた。また、地理的に近傍に位置しているにも関わらず、JA03海山とJA04海山の平頂部の群集構造は異なっていた。JA03海山では平頂部と基部の群集構造は類似していた。これらの結果から、海山の基部では類似した群集が存在する一方で、平頂部では独自の群集が存在することが示唆された。