日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ43] 再生可能エネルギーと地球科学

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、宇野 史睦(日本大学文理学部)、島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、野原 大輔(電力中央研究所)

17:15 〜 18:45

[MZZ43-P05] 沿岸域における無人航空機を用いた大気の鉛直構造の把握と気象モデルの予測精度の検証

*後藤 和恭1,2、内田 孝紀2、岸田 岳士1野原 大輔1、中尾 圭佑1、佐藤 歩1 (1.一般財団法人 電力中央研究所、2.九州大学応用力学研究所)

キーワード:沿岸効果、洋上風力、大気境界層、無人航空機、数値気象モデル

カーボンニュートラルの実現に向けて、世界中で、再生可能エネルギーの導入が進んでいる。特に、洋上風力発電は将来の主力電源として、急速に普及している。洋上風力分野において、洋上の風況を把握することは、計画~保守・管理のあらゆる段階で極めて重要である。日本近海は、水深が深いため、沿岸部に近い地点から洋上ウィンドファームの建設が進められており、欧州に比べ、風況への陸域影響が大きいことが懸念される。しかしながら、日本において、洋上における気象特性を把握するための観測事例は少なく、不明な点が多い。また、洋上風力分野における風況予測については気象モデルが幅広く利用されている。気象モデルは、広大な空間領域の予測ができる反面、空間解像度は低いため、ウィンドファーム内や沿岸域など局所的に変化する気象場の再現には課題がある。そこで、本研究では、沿岸部の風況の高精度予測を最終目的として、日本海沿岸部を対象とした観測および気象モデルの予測精度の検証を行った。
観測では、日本の陸域影響を調査するため、無人航空機を用いて、海上および陸上における大気の鉛直同時観測を行った。特に、世界的にみても事例が少ない、陸上と洋上の鉛直温度分布の差異など、熱的影響に着目した。取得したデータから、陸風時に、陸上の温かい空気が、洋上に放出されると、下層から冷やされ、安定成層が発生する事例を確認した。なお、この安定成層は陸風から海風に変化する直前の時間帯で顕著であった。また、安定成層の上端は離岸距離1300 mにおいて、海面から100m付近の高さであり、風車のハブ高さと同程度であった。この安定成層は局所的な高風速を伴うLow level Jetsの発生要因になりうるため、更なる検討が望まれる。
次に、同地点でドップラーライダにより取得した風況データを対象に、気象モデルWRFの予測精度を検証した。その結果、WRFによる風向予測の正解率は約80%であった。さらに、海風時に比べて、陸風時の風向予測の正解率は20%程度低下した。特に、陸風から海風へ変化する時間帯の予測精度は、他の時間帯に比べて低い結果となった。風向は、ウィンドファームのウェイクや制御において、非常に重要であるため、予測精度の向上のためのさらなる研究が望まれる。