14:30 〜 14:45
[MZZ45-07] 西部北太平洋亜寒帯域における起源別エアロゾル中の鉄の海洋表層へのフラックスの季節変動
キーワード:鉄、エアロゾル、西部北太平洋亜寒帯域、安定同位体比
西部北太平洋亜寒帯域は、生物生産性が高く、海が大気から二酸化炭素を最も吸収する海域の一つとして知られ、その生産性を制限する要因として鉄(Fe)の不足が挙げられる(Martin and Fitzwater, 1988)。主要なFe供給源のひとつとして大気エアロゾルが知られており、そのうち自然起源の鉱物ダストや人為的な燃焼起源物質が重要視されている。しかし、洋上では定点観測が困難であることから、この海域における大気から海洋へのFe供給量の季節変動や、エアロゾル中のFeの起源や水溶性(生物の利用しやすさと関連)、海洋表層の生物生産に対するインパクトについては未解明な点が多い。本研究では、異なる季節に西部北太平洋亜寒帯域で採取したエアロゾルに対して、起源の指標としてFe安定同位体比(δ56Fe)を用いて、エアロゾルの起源別のFeの供給フラックスや溶解性を明らかにし、海洋表層へのインパクトを評価することを目的とした。
試料は、白鳳丸KH-14-3次航海(2014年夏季)・KH-17-3次航海(2017年夏季)・みらいMR-21-01次航海(2021年冬季)・MR-22-03次航海(2022年春季)において、ハイボリウムエアサンプラーを用いて酸洗浄済みのフィルター上に粒径を分けて採取した。フィルターは混酸分解または超純水を用いた抽出処理ののち誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で濃度分析を行ったほか、陰イオン交換樹脂でFeを分離して、マルチコレクター型ICP-MSで同位体分析を行った。
エアロゾル中のFeの大気中濃度は冬季から春季に高く、夏季には1桁程度低くなる傾向が見られた。これは東アジア由来のダストが春季に卓越する傾向と一致している。一方で、Feの水溶性は冬季・春季よりも夏季に高くなる傾向が見られた。海洋表面への水溶性Feとしての供給量としては冬季・春季と夏季とで同程度と推定された。δ56Feは、粗大粒子では季節に関わらず自然起源の鉱物ダストに近い0‰を示した一方、微小粒子では冬季は最小–1‰程度、夏季はさらに低く最小–2.2‰を示した。これらの負のδ56Feは人為的に排出された燃焼起源Feの存在を示唆し(Kurisu et al., 2016; 2021)、夏季は冬季と比べて大気中のFeの総量に対する燃焼起源Feの割合が大きいことを示唆している。発表では表層海水のδ56Feとの比較から、海洋表層へのエアロゾルによるFe供給の影響も議論する。
試料は、白鳳丸KH-14-3次航海(2014年夏季)・KH-17-3次航海(2017年夏季)・みらいMR-21-01次航海(2021年冬季)・MR-22-03次航海(2022年春季)において、ハイボリウムエアサンプラーを用いて酸洗浄済みのフィルター上に粒径を分けて採取した。フィルターは混酸分解または超純水を用いた抽出処理ののち誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で濃度分析を行ったほか、陰イオン交換樹脂でFeを分離して、マルチコレクター型ICP-MSで同位体分析を行った。
エアロゾル中のFeの大気中濃度は冬季から春季に高く、夏季には1桁程度低くなる傾向が見られた。これは東アジア由来のダストが春季に卓越する傾向と一致している。一方で、Feの水溶性は冬季・春季よりも夏季に高くなる傾向が見られた。海洋表面への水溶性Feとしての供給量としては冬季・春季と夏季とで同程度と推定された。δ56Feは、粗大粒子では季節に関わらず自然起源の鉱物ダストに近い0‰を示した一方、微小粒子では冬季は最小–1‰程度、夏季はさらに低く最小–2.2‰を示した。これらの負のδ56Feは人為的に排出された燃焼起源Feの存在を示唆し(Kurisu et al., 2016; 2021)、夏季は冬季と比べて大気中のFeの総量に対する燃焼起源Feの割合が大きいことを示唆している。発表では表層海水のδ56Feとの比較から、海洋表層へのエアロゾルによるFe供給の影響も議論する。