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[MZZ45-09] 二次イオン質量分析法による低ノイズqCMOSカメラを用いた結像型同位体イメージング分析法の開発

キーワード:二次イオン質量分析法、同位体イメージング、qCMOS、マイクロチャンネルプレート
地球惑星科学分野において、地球や地球外物質の起源や経験したプロセスを理解するため,安定同位体組成をトレーサーとした多くの研究がなされてきた。太陽系物質の安定同位体比は4桁程度の違いがあるため、ダイナミックレンジは少なくとも4桁が要求される。また、岩石学的情報と同位体分布を組み合わせた議論を行うためには、その場分析によるµmスケールでの同位体イメージングが要求される。このようなイメージング分析が可能な分析手法として二次イオン質量分析法(SIMS)がある。SIMSでは、一次イオンビームを試料に照射し、スパッタされた荷電粒子(二次イオン)を電場と磁場を用いた二重収束型質量分析系において質量分離することで測定する。SIMSは水素からウランまでの質量範囲のあらゆる核種を分析することが可能である。また、SIMSによる同位体イメージング手法は、収束した一次イオンビームを走査することによりµmオーダーに空間分解能が制限される走査型と、数百µm領域における二次イオンの位置情報を保持したまま質量分析系がもつ光学収差によって空間分解能が制限される結像型がある。その場分析によるµmスケールでの同位体イメージングにおいて空間分解能とダイナミックレンジを両立させるには、結像型イメージングの方が走査型に比べて高精度同位体分析を期待できる。
これまでの定量的な結像型同位体イメージングは、マイクロチャンネルプレート(MCP)、蛍光面(FS)、CCDカメラを用いて信号を増幅し画像データを取得する手法から研究が開始された。MCP/FSを用いる手法は増幅前のイオンカウント C (Counts Per Second; cps)とイメージセンサから得られるデジタル値 I (Analog to Digital Unit; ADU)の非線形関係により定性的な分析手法として扱われてきた。一方でMantus and Morrison (1990)によりI=p⋅Cq という特性曲線を用いて定量イメージングの可能性が議論されてきた。徳永ら(2021)では,この特性曲線をCCDカメラの各ピクセルにおいて算出することでMCPの部分的な劣化や量子効率の違いに対応可能な定量イメージング手法が提案された。しかし、カメラに由来する読み出しノイズ成分や、除外しきれなかった外部光の影響などで、イオンカウントが10-1cps/pixel以下の領域での定量性が制限され、系統的な誤差要因の評価が不十分であった。
そこで本研究では、これら系統的な誤差成分となり得るノイズを減少させたイメージング手法の開発を試みた。先行研究と比較し、読み出しノイズが極めて低い浜松ホトニクス社製qCMOSカメラを組み込み、MCP/FS/qCMOSカメラレンズ光学系を専用設計された暗室で覆った。これら新しいシステムを用いて実験環境におけるノイズ成分の評価を行い、SIMSによる実験条件の最適化を行うことで特性曲線の算出を行った。
実験環境下におけるqCMOSカメラの読み出しノイズ及び暗電流ノイズは、それぞれ0.41 electrons rms, 0.016 electrons/pixels/sとカメラの仕様と同等であった。つまり、外部光がほぼ完全に遮光されていると評価される。また、SIMSの二次イオン光学系の調整により、数%以下の均一な二次イオン像を用いることで10-3 cps/pixelから101 cps/pixelまでの4桁のダイナミックレンジとなる特性曲線を取得した。
以上の得られた特性曲線の統計的処理が可能かを評価するため、均一な同位体分布であるシリコンウェハーのSi同位体比マップを取得した。各ピクセルの画像強度に対して特性曲線を適用することでイオンカウントに変換し、δ29Si,δ30Siの同位体分布を算出した。特性曲線の係数の誤差を伝播して算出したδ29Si,δ30Siの誤差と妨害イオンである28SiH-及び29SiH-の影響のない画像中心付近の50x50ピクセルの同位体分布は、調和的であった。これはイオンカウントの誤差が統計的処理で推定されることを示している。
これまでの定量的な結像型同位体イメージングは、マイクロチャンネルプレート(MCP)、蛍光面(FS)、CCDカメラを用いて信号を増幅し画像データを取得する手法から研究が開始された。MCP/FSを用いる手法は増幅前のイオンカウント C (Counts Per Second; cps)とイメージセンサから得られるデジタル値 I (Analog to Digital Unit; ADU)の非線形関係により定性的な分析手法として扱われてきた。一方でMantus and Morrison (1990)によりI=p⋅Cq という特性曲線を用いて定量イメージングの可能性が議論されてきた。徳永ら(2021)では,この特性曲線をCCDカメラの各ピクセルにおいて算出することでMCPの部分的な劣化や量子効率の違いに対応可能な定量イメージング手法が提案された。しかし、カメラに由来する読み出しノイズ成分や、除外しきれなかった外部光の影響などで、イオンカウントが10-1cps/pixel以下の領域での定量性が制限され、系統的な誤差要因の評価が不十分であった。
そこで本研究では、これら系統的な誤差成分となり得るノイズを減少させたイメージング手法の開発を試みた。先行研究と比較し、読み出しノイズが極めて低い浜松ホトニクス社製qCMOSカメラを組み込み、MCP/FS/qCMOSカメラレンズ光学系を専用設計された暗室で覆った。これら新しいシステムを用いて実験環境におけるノイズ成分の評価を行い、SIMSによる実験条件の最適化を行うことで特性曲線の算出を行った。
実験環境下におけるqCMOSカメラの読み出しノイズ及び暗電流ノイズは、それぞれ0.41 electrons rms, 0.016 electrons/pixels/sとカメラの仕様と同等であった。つまり、外部光がほぼ完全に遮光されていると評価される。また、SIMSの二次イオン光学系の調整により、数%以下の均一な二次イオン像を用いることで10-3 cps/pixelから101 cps/pixelまでの4桁のダイナミックレンジとなる特性曲線を取得した。
以上の得られた特性曲線の統計的処理が可能かを評価するため、均一な同位体分布であるシリコンウェハーのSi同位体比マップを取得した。各ピクセルの画像強度に対して特性曲線を適用することでイオンカウントに変換し、δ29Si,δ30Siの同位体分布を算出した。特性曲線の係数の誤差を伝播して算出したδ29Si,δ30Siの誤差と妨害イオンである28SiH-及び29SiH-の影響のない画像中心付近の50x50ピクセルの同位体分布は、調和的であった。これはイオンカウントの誤差が統計的処理で推定されることを示している。