日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ46] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)

17:15 〜 18:45

[MZZ46-P06] 栗駒山麓ジオパークにおける環境倫理プログラムLeave No Traceの導入と展開プロセス

*長尾 隼1、塚原 俊也2 (1.栗駒山麓ジオパーク推進協議会、2.くりこま高原自然学校)

キーワード:栗駒山麓ジオパーク、Leave No Trace、サステイナブルツーリズム、レスポンシブルツーリズム、環境倫理、来訪者教育

栗駒山麓ジオパーク推進協議会では,2022年度より環境倫理プログラムLeave No Traceの導入を進めている.
Leave No Trace(以下LNTと記載する)は,環境へのインパクトを最小限にしてアウトドアを楽しむための環境倫理プログラムである.すべてのテクニックが7つの原則に集約され,現在では世界90ヶ国においてアウトドアレクリエーションの行動基準となっている.国内では2013年に導入され,2021年に設立された特定非営利活動法人リーブノートレイスジャパン(以下LNTJと記載する)が国際ブランチとして活動を展開している.
栗駒山麓ジオパークでは, 協議会部会メンバーのくりこま高原自然学校がLNTの普及活動を進め,当協議会の活動においては特にトレイル構築事業を通して理念と経験の共有が図られた.また,2022年度より,アウトドア活動が原因となり環境へのダメージが顕在化している地域へのLNTJ支援プログラムであるホットスポットプログラムに栗駒山紅葉シーズンのオーバーユースが選ばれていることから,協議会構成団体内でのLNTを軸とした協働プロセスも進むこととなった.
本発表では,当ジオパークにおけるLNTの導入と展開プロセスについて概観し,LNTを介した2022年度以降の展開および協働事例,それぞれの成果を整理し共有する.
(1)理念の共有と普及のプロセス
LNT体験ワークショップを4回,指導者資格であるL1インストラクターを取得できるインストラクターコースを2回開催し,地域内のアクターにLNTの理念を共有する機会とした.協議会事務局スタッフがL1インストラクターを取得したことから,拠点施設や活動等においてLNTについてのインタープリテーションが可能となった.インタープリテーションの事例として,イベント等でのミニワークショップ,市内高等学校出前事業での活用,トレイル構築プロセスにおける現場での共有,栗駒山麓ジオパークビジターセンターにおける展示等がある.
(2)地域課題への取り組みと協働の事例
栗駒山麓ジオパークエリアに位置する栗駒山は標高1,626mの活火山である.近年では紅葉シーズンのオーバーユースが顕在化しており,登山道の複線化や植生被害,来訪者の体験の質の低下といった問題が生じている.
この問題に対し,LNTの普及を軸とした協議会構成団体による協働のアプローチとして下記の取り組みを実施している.栗駒山シャトルバス乗降口での来訪者への広報・アンケート調査,協議会SNSでの広報活動,環境に配慮した登山を紹介する動画の作成等.また,紅葉シーズン以外の取り組みとして栗駒山夏山開きにおいてもブースを出展し,来訪者の行動変容を促す情報提供を行っている.
(3)今後の取り組み
今後の活動として,LNTを軸とした地域内外のネットワークや協働事例の拡充,拠点施設や各所におけるインタープリテーションの充実といった内容が想定される.
LNTはフィールドにおける行動基準を示す来訪者教育であることから,管理するフィールドを有し来訪者への情報提供や体験を促す各地のジオパークプログラム運営組織では導入を進めやすいものと考えられる.今後多くのジオパークにおいてもLNTの普及が進むことを希望する.