日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] なぜ生物は生体鉱物を作るのか?〜アート思考による科学の進展〜

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:荒木 優希(金沢大学)、豊福 高志(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、長井 裕季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)


17:15 〜 18:45

[O02-P03] 水の研究から見たバイオミネラリゼーション

*荒木 優希1 (1.金沢大学)

キーワード:界面水、バイオミネラリゼーション、周波数変調原子間力顕微鏡

水は、あらゆる生物の生命活動維持に不可欠であり、食品製造からアートまで、我々の文化的生活に恩恵をもたらしてきた物質である。さまざまな物理的・化学的現象においても水は媒体として必要であるが、身近な物質であるがゆえに、その現象の主役として論じられることは少ない。しかし、近年の測定手法の高感度化に伴い、水を観測対象とする研究が増加しており、その重要性が注目されつつある。本研究では、周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて、固液界面の構造を原子・分子スケールでその場観察する技術を応用し、バイオミネラルにも用いられる炭酸カルシウムの界面水構造を研究してきた。その結果、炭酸カルシウムのバイオミネラリゼーションにおける結晶多形の相転移現象において鍵物質の一つであるマグネシウムイオンが、界面水の構造を著しく変化させることがわかった。また、同様にFM-AFMを用いて粘土鉱物表面へのイオン吸着をその場観察した結果からは、水がイオンの秩序的な吸着を促す可能性が示された。日常生活においても、水は物質の吸着や輸送を促す役割を果たすが、厚さ1 nmに満たない微視的な界面水も吸着や輸送において重要な役割を果たしていると考えられる。発表では、微視的な現象における界面水の役割に焦点を当て、アート分野の専門家との意見交換を通して、バイオミネラリゼーションにおける水の重要性について理解を深める。