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[O05-04] 豪雨による土砂・流木災害の予測と減災: 斜面における風化帯・地下水・森林のモデル化と流域デジタルツインの構築
★招待講演
キーワード:地表近傍境界域、プロセスベースドモデル、ハザードマッピング、土砂・流木生産、決定論的予測、確率論的評価
山地流域での降水浸透に伴う土砂移動現象について,水文地形学的な場の条件と過程のモデリングが進んでいる.山地の斜面では,風化岩と土層からなる風化帯が,それを生存基盤とする生態系と合わせて,地表近傍における気圏・水圏・岩石圏・生物圏の境界域(Critical zone)を構成している.森林に覆われた湿潤温暖帯の山地斜面における地表近傍境界域とは,すなわち,森林樹冠の頂部から,陸域水循環に伴う岩盤の化学風化が及ぶ前線までを指す.その地下部分では,105年以上の時間スケールでの地域的なテクトニクスと気候変動の影響を受けつつ,岩盤の物理・化学風化による105–104年での風化帯の発達,風化岩盤上面での土粒子の生成と緩慢な匍行輸送による103–102年での土層の形成,森林の成立に伴う102–100年での植物根系の伸展,降水の浸透による10−1–10−5年での体積含水率と間隙水圧の変動などが生じている.これらの異なる時空間スケールでの現象による素因条件と誘因作用の帰結として,一定以上の強度と継続時間をもつ豪雨時には,例えば表層崩壊のような地盤の破壊と土砂移動を伴う地形変化が生じる.表層崩壊の場所(発生位置)・規模(崩土量)・時刻(降雨閾値)の三要素を予測し,山地流域からの土砂と流木の生産量を評価するには,異なる時空間スケールでの要因を,それぞれモデル化し,カップリングさせて,現実に生じている現象を必要な確度と精度で再現する必要がある.本発表では,そのような水文地形学的モデリングの試みと,それを用いた山地流域からの土砂および流木生産の確率論的評価を紹介する.
