日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-05] 線状降水帯: 発生メカニズム・予測から防減災まで

2024年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:佐々 浩司(高知大学教育研究部自然科学系理学部門)、和田 章(東京工業大学)、佐山 敬洋(京都大学)、宮地 良典(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:和田 章(東京工業大学)、米田 雅子(東京工業大学)


11:05 〜 11:25

[O05-05] 総観および対流スケールにおける線状降水帯の出現特性と防災行動

★招待講演

*山田 朋人1 (1.北海道大学)

キーワード:Disaster prevention actions、line-shaped rainbands、climate change、torrential rainfall

風水害に対する個人・企業等が行う対処・行動の多くは、過去の災害経験に基づいている場合が多く、必ずしも将来起こりうる豪雨等の特徴を反映したものではない。その一方で、近年は気候変動に伴う豪雨の激甚化・頻発化が顕著であり、将来においては豪雨の更なる激甚化・頻発化が予想される。このことから、個人・企業等が行う対処・行動は将来起こりうる風水害を踏まえる必要がある。
 本研究では,日本において豪雨災害を引き起こす代表的な原因のひとつである線状降水帯の出現特性の将来変化を予測した.線状降水帯の客観的な抽出基準として以下に示す2つの閾値を採用した.1つ目は,Hirockawa et al.(2023a, b)の手法に基づき,暖候期の北日本を除く日本の年1回程度の発生を目安として設定した.これに加えてOhya and Yamada(2023)の手法に基づき,防災的観点から北日本域で発生した過去の災害に基づき降雨量の閾値を引き下げた2つ目の基準を設定した.これらの閾値を過去およそ30年間の解析雨量に適用することで,日本全域で発生した線状降水帯の出現頻度の経年変化および季節変化を明らかにする.
 まず初めに,線状降水帯の出現特性を総観スケールの気象場に基づいて議論するために,Miyamoto and Yamada (2023)が気象庁の地上天気図から作成した前線の出現情報を用いた分析を実施する.また,Ohya and Yamada(2024)による機械学習を用いた気象モデルの出力結果の分類に基づき,総観気象場パターン別に線状降水帯の出現特性を議論する.これに加え,気候変動の影響による将来変化を議論するため,地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を領域気候モデルによって実施した水平解像度5kmへの力学的ダウンスケーリングの高解像度出力に対して,線状降水帯の定義を適用することで線状降水帯の出現特性の統計的な特徴を明らかにする.
 次に,観測に基づき対流スケールにおける線状降水帯の出現特性を明らかにする(demonstrate).高性能レーダ雨量計ネットワーク(XRAIN)を用いた大屋・山田(2023)の手法による線状降水帯を構成する降水セルの追跡とドップラーレーダーの観測値を用いて変分原理で最適化させた風速場推定を実施することで,線状降水帯の形成過程における三次元構造の特徴を議論する.
このように,観測結果を活用した総観および対流スケールにおける線状降水帯の出現情報と最新の気候モデルによる予測結果を用いて,線状降水帯を伴う防災行動について議論する.なお,本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマート防災ネットワークの構築」の研究課題を推進している。なお、この研究課題は本年9月に著者を研究開発責任者として推進されている。当会議に置いては、上記した研究内容の最新の成果を紹介する。