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[O08-P01] 災害地名の由来の妥当性と地域の代表的な地形の抽出方法
キーワード:地名、災害、地形、ハザードマップ
目的
日本の地名は、地形由来、災害由来、建造物由来、縁起の良い言葉由来など多くの由来を持つ。しかし、災害由来とされる地名の由来の根拠の中には「牛は憂しを意味するから」のように、本当に災害由来なのかすぐには判断できないものがある。また、地形由来の地名と災害由来の地名の区別が付かないものもある。そこで本研究では、地名中の漢字の意味を統計的な手法を使って検証し、そのために地域の地形を分類する方法を作成した。
データ
1. 地形分類図
2. 歴史地名データ辞書
3. ハザードマップ
など
方法
研究対象として、歴史地名データ辞書の地名の内、明治時代から周辺の地形が改変されていない地域の小規模地名を抽出した。災害との関係を調べるため、災害由来と言われる地名に使われる漢字(災害漢字)ごとに、「地名に災害漢字が使われていると、災害リスクが高まる」かどうかをカイ二乗検定、またはフィッシャーの正確検定で判定した。
実験1
地名の代表点周辺の地形の種類ごとの面積を比べて、災害漢字ごとに周辺の地形に差があるかを判定した。
実験2
実験1では地形の面積を比較した。しかし、崖や地滑り地形など面積は狭いが住民にとっては大きな存在となる地形が軽視されていた。そのため、実験2では目立つ地形を地域を代表する地形として抽出し(例を図に掲載)、災害漢字ごとに特徴的な地形を判定した。その後近所の地名を回り、地域の地形が上手く判定されているか確認した。
結果
研究対象として、歴史地名データ辞書の全データ約29万個の内、約2.8万個の地名が抽出された。災害漢字の内、災害を意味するのは「川、菅、沼、和田、押、袋、龍・竜、柳、来・久留、新田、津、島、谷、滝、田、浦、江、浜」の18字だった。
実験1
「島、谷、滝、田、浦、江、浜、宿、窪・久保」の9字が地形を意味していた。
実験2
「川、島、沼、谷、滝、柳、田、新田、浦、江、津、浜、宿、窪・久保」の14字が地形を意味していた。現地調査では近所の18個の地名を回った。
考察
災害を意味する18字の内、意味する災害と参考文献の中で意味するとされた災害に違いがあった「菅、和田、龍・竜、柳、来・久留、島、谷、浦、江」の9字について考察した。「柳、島、谷、浦、江」の5つは漢字の意味と意味する災害に関係があると考えられる。「柳」は河岸に多い植物なので洪水につながる。「島」は水面上にあり、周囲が埋め立てられた場所もあることから、低地や平地に位置する。「谷」と「浦」(入り江)では谷底や平地を挟む山の崩壊がある。「江」も入り江を意味し、そこを流れる川が洪水のリスクをもたらすと考えられる。一方、その他の漢字は漢字の意味と意味する災害につながりが見られなかった。
実験1
災害または地形を意味する20字の漢字の内、「川、沼、新田、宿」の4字は意味するものと漢字の意味が合っていなかった。「川、沼」は災害のみを意味すると判定されたが、漢字の意味を考えると地形を意味してもおかしくない。しかし実験1では地形の割合を比べただけであり、川は細く、沼は小さいために地形を意味しないと判定されたと考えられる。「新田」は埋立地であることから、水部の地形が多くを占めると予想されたが水部の面積に特徴はないと判断されており、地形を意味しない理由はわからなかった。「宿」は宿場町・宿屋を意味し、地形との関係がないように思えるが、宿は街道沿いにあり、街道は安定した地形の上を通っているため、地形に特徴があると考えられる。
実験2
実験2では意味するものと漢字の意味が合っていなかった字は「柳」のみとなった。「柳」は河岸に多い植物であり、水部(川)の面積が小さいため、実験1では地形を意味せず、実験2では地形を意味すると判定されたと考えられる。現地調査では、対象の18個の地名のほとんどで実験2で判定された地形が地域の地形の特徴をよく表していた。
結論
災害または地形を意味する20字の漢字の内、地形を意味すると判定された14字は漢字の意味と意味する地形につながりが見られた。そのため、地形由来の地名と災害由来の地名やどちらにも由来している地名の区別は、統計的手法で可能であるとわかった。実験2の地域の地形の分類方法は、実験1に比べて精度が上がり、実験1では得られなかった各漢字が含まれる地名の地域に多い地形の情報を得ることができた。よって、地形分類図を使い地域の地形の分類方法を作ることができた。
制作物
1. 実験方法のプログラム
2. 地名の代表点周辺の地形を確認できるWebサイト
参考文献
1. 丸山淳一「洪水危険、土砂崩れ注意...「地名」は警告する」(読売新聞オンライン)2018年
2. 花岡和聖「小地域地名の語尾と自然災害リスクの関連性」2015年
日本の地名は、地形由来、災害由来、建造物由来、縁起の良い言葉由来など多くの由来を持つ。しかし、災害由来とされる地名の由来の根拠の中には「牛は憂しを意味するから」のように、本当に災害由来なのかすぐには判断できないものがある。また、地形由来の地名と災害由来の地名の区別が付かないものもある。そこで本研究では、地名中の漢字の意味を統計的な手法を使って検証し、そのために地域の地形を分類する方法を作成した。
データ
1. 地形分類図
2. 歴史地名データ辞書
3. ハザードマップ
など
方法
研究対象として、歴史地名データ辞書の地名の内、明治時代から周辺の地形が改変されていない地域の小規模地名を抽出した。災害との関係を調べるため、災害由来と言われる地名に使われる漢字(災害漢字)ごとに、「地名に災害漢字が使われていると、災害リスクが高まる」かどうかをカイ二乗検定、またはフィッシャーの正確検定で判定した。
実験1
地名の代表点周辺の地形の種類ごとの面積を比べて、災害漢字ごとに周辺の地形に差があるかを判定した。
実験2
実験1では地形の面積を比較した。しかし、崖や地滑り地形など面積は狭いが住民にとっては大きな存在となる地形が軽視されていた。そのため、実験2では目立つ地形を地域を代表する地形として抽出し(例を図に掲載)、災害漢字ごとに特徴的な地形を判定した。その後近所の地名を回り、地域の地形が上手く判定されているか確認した。
結果
研究対象として、歴史地名データ辞書の全データ約29万個の内、約2.8万個の地名が抽出された。災害漢字の内、災害を意味するのは「川、菅、沼、和田、押、袋、龍・竜、柳、来・久留、新田、津、島、谷、滝、田、浦、江、浜」の18字だった。
実験1
「島、谷、滝、田、浦、江、浜、宿、窪・久保」の9字が地形を意味していた。
実験2
「川、島、沼、谷、滝、柳、田、新田、浦、江、津、浜、宿、窪・久保」の14字が地形を意味していた。現地調査では近所の18個の地名を回った。
考察
災害を意味する18字の内、意味する災害と参考文献の中で意味するとされた災害に違いがあった「菅、和田、龍・竜、柳、来・久留、島、谷、浦、江」の9字について考察した。「柳、島、谷、浦、江」の5つは漢字の意味と意味する災害に関係があると考えられる。「柳」は河岸に多い植物なので洪水につながる。「島」は水面上にあり、周囲が埋め立てられた場所もあることから、低地や平地に位置する。「谷」と「浦」(入り江)では谷底や平地を挟む山の崩壊がある。「江」も入り江を意味し、そこを流れる川が洪水のリスクをもたらすと考えられる。一方、その他の漢字は漢字の意味と意味する災害につながりが見られなかった。
実験1
災害または地形を意味する20字の漢字の内、「川、沼、新田、宿」の4字は意味するものと漢字の意味が合っていなかった。「川、沼」は災害のみを意味すると判定されたが、漢字の意味を考えると地形を意味してもおかしくない。しかし実験1では地形の割合を比べただけであり、川は細く、沼は小さいために地形を意味しないと判定されたと考えられる。「新田」は埋立地であることから、水部の地形が多くを占めると予想されたが水部の面積に特徴はないと判断されており、地形を意味しない理由はわからなかった。「宿」は宿場町・宿屋を意味し、地形との関係がないように思えるが、宿は街道沿いにあり、街道は安定した地形の上を通っているため、地形に特徴があると考えられる。
実験2
実験2では意味するものと漢字の意味が合っていなかった字は「柳」のみとなった。「柳」は河岸に多い植物であり、水部(川)の面積が小さいため、実験1では地形を意味せず、実験2では地形を意味すると判定されたと考えられる。現地調査では、対象の18個の地名のほとんどで実験2で判定された地形が地域の地形の特徴をよく表していた。
結論
災害または地形を意味する20字の漢字の内、地形を意味すると判定された14字は漢字の意味と意味する地形につながりが見られた。そのため、地形由来の地名と災害由来の地名やどちらにも由来している地名の区別は、統計的手法で可能であるとわかった。実験2の地域の地形の分類方法は、実験1に比べて精度が上がり、実験1では得られなかった各漢字が含まれる地名の地域に多い地形の情報を得ることができた。よって、地形分類図を使い地域の地形の分類方法を作ることができた。
制作物
1. 実験方法のプログラム
2. 地名の代表点周辺の地形を確認できるWebサイト
参考文献
1. 丸山淳一「洪水危険、土砂崩れ注意...「地名」は警告する」(読売新聞オンライン)2018年
2. 花岡和聖「小地域地名の語尾と自然災害リスクの関連性」2015年