13:45 〜 15:15
[O08-P02] 丹沢山地の大滝沢のトーナル岩に含まれるゼノリスの種類と原岩
キーワード:トーナル岩、ゼノリス、丹沢山地
[目的]
相模湾の海岸ではゼノリスを含むトーナル岩が見られ、このトーナル岩は丹沢山地が起源である。これらのトーナル岩とそのゼノリスを観察すると、それらの色や鉱物の大きさの違いより、含まれるゼノリスは複数種類あるように思われた。それぞれのゼノリスがどこの岩体の何の岩石に由来するのかを知りたいと思った。滝田(1974)[1]によると、包有される捕獲岩には、細粒の変輝緑岩質岩と大滝沢型類似岩が最も多く、このほかホルンフエルス、角閃片岩、斑れい岩類があるとされた。石川(2016)[2]によると、トーナル岩中のエンクレーブの一方は、丹沢複合深成岩体に貫入した島弧玄武岩に由来し、他方はトーナル岩との混合・混交の結果取り込まれたトーナル岩に由来するとされている。今回は特に、ゼノリスが顕著に見られる大滝沢にて調査をした。本研究の目的は、丹沢山地の大滝沢におけるトーナル岩中に含まれるゼノリスの種類とその原岩を推定することである。
[方法]
2023年9月13日と2023年12月2日に丹沢山地大滝沢にてフィールドワークを実施し、合計10地点(図1,2)でトーナル岩とゼノリスを採集した。9月13日には図1のOtaki-A, B,
Cとコルにあたる2地点との合計5地点、12月2日には図2に示したように前回よりも奥の5地点で採集した。各地点でトーナル岩とゼノリスの試料から作成した薄片を、偏光顕微鏡で観察して岩石の特徴を記載した。二回目の試料の分析では、試料を鉄乳鉢で砕いた後にめのう乳鉢で粉末にして、主要元素の酸化物の重量%を測定した。しかし、装置の性能によりMgO, Na2O, P2O5の測定ができなかった。
[結果]
9月13日に実施したフィールドワークでは、図1に示した地点Otaki-A、B、Cのいずれでもトーナル岩体中にゼノリスが認められた。図3にゼノリスの薄片、図4にトーナル岩の薄片を示す。いずれの写真も、左がオープンニコル、右がクロスニコルである。角閃石、石英、磁鉄鉱が認められた。角閃石は明らかな多色性がみられた。四角形でステージを回転しても暗いままの鉱物を磁鉄鉱と判断した。ゼノリスを構成する鉱物は、トーナル岩の鉱物よりも小さいことが分かった。12月2日に実施したフィールドワークでは、図2の地点A, B, Eにてゼノリスが、全ての地点においてトーナル岩を採集した。蛍光X線分析の結果は図5に示した通りであり、図6はその結果を用いたハーカー図である。図6の暖色はトーナル岩を、寒色はゼノリスを示している。右端の数値は[5]に掲載されている角閃岩のデータである。
[考察]
実験2のXRFの結果(図6)より、地点BとEのゼノリスはどちらもSiO2が53%台であり値が近く、地点Aのゼノリスより値が大きい。このため、少なくともB,E地点のゼノリスは同じ種類と考えられる。しかし、地点Aのゼノリスが別の種類であるのかの判断をすることはできない。なぜなら、約2%の値の差が誤差なのか明確な差であるかを決める根拠がないからである。よって、少なくとも1種類のゼノリスがあるとする。また、これらA, B, E地点のいずれのゼノリスも、角閃岩の主成分化学組成([5]より)に値が近いことより、大滝沢のゼノリスは角閃岩であると考えられる。そして、角閃岩の原岩は苦鉄質岩である。つまり、大滝沢のトーナル岩には少なくとも1種類のゼノリスが含まれ、大滝沢のトーナル岩に含まれるゼノリスは角閃岩であり、さらにその原岩は苦鉄質岩であるといえる。
相模湾の海岸ではゼノリスを含むトーナル岩が見られ、このトーナル岩は丹沢山地が起源である。これらのトーナル岩とそのゼノリスを観察すると、それらの色や鉱物の大きさの違いより、含まれるゼノリスは複数種類あるように思われた。それぞれのゼノリスがどこの岩体の何の岩石に由来するのかを知りたいと思った。滝田(1974)[1]によると、包有される捕獲岩には、細粒の変輝緑岩質岩と大滝沢型類似岩が最も多く、このほかホルンフエルス、角閃片岩、斑れい岩類があるとされた。石川(2016)[2]によると、トーナル岩中のエンクレーブの一方は、丹沢複合深成岩体に貫入した島弧玄武岩に由来し、他方はトーナル岩との混合・混交の結果取り込まれたトーナル岩に由来するとされている。今回は特に、ゼノリスが顕著に見られる大滝沢にて調査をした。本研究の目的は、丹沢山地の大滝沢におけるトーナル岩中に含まれるゼノリスの種類とその原岩を推定することである。
[方法]
2023年9月13日と2023年12月2日に丹沢山地大滝沢にてフィールドワークを実施し、合計10地点(図1,2)でトーナル岩とゼノリスを採集した。9月13日には図1のOtaki-A, B,
Cとコルにあたる2地点との合計5地点、12月2日には図2に示したように前回よりも奥の5地点で採集した。各地点でトーナル岩とゼノリスの試料から作成した薄片を、偏光顕微鏡で観察して岩石の特徴を記載した。二回目の試料の分析では、試料を鉄乳鉢で砕いた後にめのう乳鉢で粉末にして、主要元素の酸化物の重量%を測定した。しかし、装置の性能によりMgO, Na2O, P2O5の測定ができなかった。
[結果]
9月13日に実施したフィールドワークでは、図1に示した地点Otaki-A、B、Cのいずれでもトーナル岩体中にゼノリスが認められた。図3にゼノリスの薄片、図4にトーナル岩の薄片を示す。いずれの写真も、左がオープンニコル、右がクロスニコルである。角閃石、石英、磁鉄鉱が認められた。角閃石は明らかな多色性がみられた。四角形でステージを回転しても暗いままの鉱物を磁鉄鉱と判断した。ゼノリスを構成する鉱物は、トーナル岩の鉱物よりも小さいことが分かった。12月2日に実施したフィールドワークでは、図2の地点A, B, Eにてゼノリスが、全ての地点においてトーナル岩を採集した。蛍光X線分析の結果は図5に示した通りであり、図6はその結果を用いたハーカー図である。図6の暖色はトーナル岩を、寒色はゼノリスを示している。右端の数値は[5]に掲載されている角閃岩のデータである。
[考察]
実験2のXRFの結果(図6)より、地点BとEのゼノリスはどちらもSiO2が53%台であり値が近く、地点Aのゼノリスより値が大きい。このため、少なくともB,E地点のゼノリスは同じ種類と考えられる。しかし、地点Aのゼノリスが別の種類であるのかの判断をすることはできない。なぜなら、約2%の値の差が誤差なのか明確な差であるかを決める根拠がないからである。よって、少なくとも1種類のゼノリスがあるとする。また、これらA, B, E地点のいずれのゼノリスも、角閃岩の主成分化学組成([5]より)に値が近いことより、大滝沢のゼノリスは角閃岩であると考えられる。そして、角閃岩の原岩は苦鉄質岩である。つまり、大滝沢のトーナル岩には少なくとも1種類のゼノリスが含まれ、大滝沢のトーナル岩に含まれるゼノリスは角閃岩であり、さらにその原岩は苦鉄質岩であるといえる。