13:45 〜 15:15
[O08-P105] 阿蘇仙酔峡にみられる赤い表面のアグルチネートについて
キーワード:中岳火山、アグルチネート、酸化
[背景と目的]
阿蘇仙酔峡には中岳火山の火砕岩や凝灰岩、鷲ヶ峰火山の火砕岩が分布している(小野・渡辺,1985)。その中には表面だけが赤く色づいているアグルチネートがみられる(写真1)。また,ほとんどの岩石の表面には赤色の部位(変色部位)と赤色になっていない部位(未変色部位)が混在している。本研究では、どのような物質が赤色の原因になっているのかについて現地調査と高校理科で扱う手法を用いて検討を行った。
[方法1]現地調査・岩石の性質調査
仙酔峡から阿蘇中岳火口までの登山道で同様の変化が起きている火山噴出物が他の地点で確認されるのかを調べた。
未変色部位、変色部位、岩石の中、加熱により変色させた表面をそれぞれ双眼実体顕微鏡で観察し,変色部位と加熱により変色させた表面の共通しているところを調べた。また磁性、電気伝導性、濃塩酸との反応、希硫酸との反応をそれぞれ調べた。
[方法2]酸化鉄の同定
阿蘇中岳周辺の上米塚では鉄の高温酸化により変色した赤褐色を呈するスコリアがあり(江島,2015;池辺,2015)、今回の対象も同様の仕組みであると仮定して実験を行った。未変色部位を全体が赤熱するまでガスバーナーの外炎で加熱し(5分程度)空気中、水道水、高度精製油、無水エタノールそれぞれで冷却を行った。その後それらを「加熱により変色させた表面」として方法1と同様の調査した。
また、元から赤く変色していた表面と加熱により変色させた表面それぞれを粉末状にし、鉄が含まれているかを確認するために水酸化ナトリウム水溶液との沈殿反応を用いて定性分析を行った(松本,2023)。さらに酸化鉄が含まれているかを確認するため、我が校で行われているテルミット反応の演示実験を参考にして、アルミニウム粉末3gと先の実験で生成した粉末8gを混合し加熱した。
[結果1]
今回の調査では仙酔峡西部に少量、東部の仙酔峡展望所付近により多くの変色した火山噴出物が確認された。また、阿蘇中岳に確認される「皿石」と呼ばれている火山噴出物が今回の対象と表面の状態が非常に似ていた。観察の結果と磁性、電気伝導性、濃塩酸との反応、希硫酸との反応は表1,2の通りである。岩石の内部に関して,クリンカー状のものや玄武岩や凝灰岩のサンプルがあり表面は同じであるが内部の状態は様々であった。
[結果2]
加熱後に変色が確認された割合は表2の通りである。無水エタノールの実験では冷却した後のサンプルに火を近づけるとしばらくの間燃焼が続いた。また、水酸化ナトリウム水溶液を用いた沈殿反応の実験では両サンプルとも赤褐色沈殿が確認された。しかし、テルミット法を用いた実験では反応が確認されなかった。
[考察と今後の展望]
結果より、元から赤く変色していた表面と加熱により変色させた表面では同じような特徴があったため、仙酔峡でも同様に高温になった岩石が冷やされることによって赤色変色が起きたと考えられる。また、岩石の表面には鉄が含まれている事が判明した。しかしながら、上米塚のスコリアの変色の場合急冷されると黒色の酸化第一鉄(FeO)ができ、高温でゆっくり冷えると酸化が進み、赤褐色の酸化第二鉄(Fe2O3)ができるといわれている(池辺,2015)。今回は液体で急冷しても空気中で冷却しても多くの部分では赤色変色が生じたため、参考にした研究とは別の結果が得られた。また、高度精製油,無水エタノールの実験では、それぞれの液体は主に還元剤として機能するため酸化鉄という仮定には矛盾が生じてしまう結果になった。仮説を立てた酸化鉄に関して本研究ではテルミット法のみの検証になったため、今後高温の空気中での冷却やより多様な種類の液体による急冷をはじめとする酸化鉄の同定について研究を進めたい。
阿蘇仙酔峡には中岳火山の火砕岩や凝灰岩、鷲ヶ峰火山の火砕岩が分布している(小野・渡辺,1985)。その中には表面だけが赤く色づいているアグルチネートがみられる(写真1)。また,ほとんどの岩石の表面には赤色の部位(変色部位)と赤色になっていない部位(未変色部位)が混在している。本研究では、どのような物質が赤色の原因になっているのかについて現地調査と高校理科で扱う手法を用いて検討を行った。
[方法1]現地調査・岩石の性質調査
仙酔峡から阿蘇中岳火口までの登山道で同様の変化が起きている火山噴出物が他の地点で確認されるのかを調べた。
未変色部位、変色部位、岩石の中、加熱により変色させた表面をそれぞれ双眼実体顕微鏡で観察し,変色部位と加熱により変色させた表面の共通しているところを調べた。また磁性、電気伝導性、濃塩酸との反応、希硫酸との反応をそれぞれ調べた。
[方法2]酸化鉄の同定
阿蘇中岳周辺の上米塚では鉄の高温酸化により変色した赤褐色を呈するスコリアがあり(江島,2015;池辺,2015)、今回の対象も同様の仕組みであると仮定して実験を行った。未変色部位を全体が赤熱するまでガスバーナーの外炎で加熱し(5分程度)空気中、水道水、高度精製油、無水エタノールそれぞれで冷却を行った。その後それらを「加熱により変色させた表面」として方法1と同様の調査した。
また、元から赤く変色していた表面と加熱により変色させた表面それぞれを粉末状にし、鉄が含まれているかを確認するために水酸化ナトリウム水溶液との沈殿反応を用いて定性分析を行った(松本,2023)。さらに酸化鉄が含まれているかを確認するため、我が校で行われているテルミット反応の演示実験を参考にして、アルミニウム粉末3gと先の実験で生成した粉末8gを混合し加熱した。
[結果1]
今回の調査では仙酔峡西部に少量、東部の仙酔峡展望所付近により多くの変色した火山噴出物が確認された。また、阿蘇中岳に確認される「皿石」と呼ばれている火山噴出物が今回の対象と表面の状態が非常に似ていた。観察の結果と磁性、電気伝導性、濃塩酸との反応、希硫酸との反応は表1,2の通りである。岩石の内部に関して,クリンカー状のものや玄武岩や凝灰岩のサンプルがあり表面は同じであるが内部の状態は様々であった。
[結果2]
加熱後に変色が確認された割合は表2の通りである。無水エタノールの実験では冷却した後のサンプルに火を近づけるとしばらくの間燃焼が続いた。また、水酸化ナトリウム水溶液を用いた沈殿反応の実験では両サンプルとも赤褐色沈殿が確認された。しかし、テルミット法を用いた実験では反応が確認されなかった。
[考察と今後の展望]
結果より、元から赤く変色していた表面と加熱により変色させた表面では同じような特徴があったため、仙酔峡でも同様に高温になった岩石が冷やされることによって赤色変色が起きたと考えられる。また、岩石の表面には鉄が含まれている事が判明した。しかしながら、上米塚のスコリアの変色の場合急冷されると黒色の酸化第一鉄(FeO)ができ、高温でゆっくり冷えると酸化が進み、赤褐色の酸化第二鉄(Fe2O3)ができるといわれている(池辺,2015)。今回は液体で急冷しても空気中で冷却しても多くの部分では赤色変色が生じたため、参考にした研究とは別の結果が得られた。また、高度精製油,無水エタノールの実験では、それぞれの液体は主に還元剤として機能するため酸化鉄という仮定には矛盾が生じてしまう結果になった。仮説を立てた酸化鉄に関して本研究ではテルミット法のみの検証になったため、今後高温の空気中での冷却やより多様な種類の液体による急冷をはじめとする酸化鉄の同定について研究を進めたい。