日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P25] 三陸ジオパーク北部エリアのジオ多様性の研究

*杉本 よし埜1、*川口 慶治1、*平 希望1 (1.マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニア)

キーワード:ジオパーク活動、ジオ多様性

1 背景と目的
本クラブは2018年から三陸ジオパークについて研究し、有意義で魅力のあるジオパーク活動について検討し各種の提案をしてきた。オブザーバー会員として2023年私たちは、ジオ多様性について学んできた。その過程で、多様性の評価をジオサイト以外のサイトに拡げることが提案された。これは、三陸ジオパークのサイトへの選定理由が、明確に理解できなかった生態系サイトや文化サイトがあり、これらを多様性の概念を用いて説明できると考えたからである。

2 データおよび解析方法 
 本論で取り扱うサイトは、会員の通学範囲の青森県八戸市から岩手県洋野町にある19のジオサイトとした。設定範囲内でジオサイト指定のあるサイトについては、ジオサイトの評価は高木・長田2)による評価法を用いた。評価は6つの主項目と、各々の主項目について3つずつの副項目を設定し、合計18項目の採点を4段階で評価するものである。
 次にジオサイトの指定がなかった5サイト(図1)についてジオとの関連性を柿崎喜宏(2023)の方法により、1.環境保全、2.持続可能な開発、3.生物多様性、4.文化の多様性の4トピックを挙げて検討した。取り上げたのは生態系指定のみの深久保の白岩、掟の松原、文化指定のみの青葉湖、寺下観音灯明堂、種市層(ウニ増殖溝)についてである。

3 結果
 検討結果の一例を以下に示す。
17.種市層(ウニ増殖溝)
(1)4トピックとの関連性
 1.環境保全: 増殖溝の保全
 2.持続可能な開発: 増殖溝の掘削、ウニ養殖、ウニやアワビ稚貝の放出、津波防潮堤
 3.生物多様性: 海食台と潮間帯
 4.文化多様性: 南部もぐり、ウニ生産日本一
(2)ジオとの関連性
 海食台は隆起した海崖が波に浸食されてできる
 種市層は中生代後期白亜紀の浅海層で、日本では洋野町の沿岸のみで、カキやアンモナイトなどの化石が産出
(3)私たちが考えた観光案内等への説明案
 種市層は、日本で洋野町の海岸のみにある白亜紀の浅海層です。種市層の特色を生かし、隆起した海食台に溝を掘ってウニやアワビの増殖溝を作りました。その結果、ウニの生産量は日本一で、種市のウニは大地と海のめぐみといえます。

4 考察と今後の課題 
 ジオの多様性が重要であるということが分かったが、多様性の概念について論議があった。また複数の概念を結びつけるのは”在来知”であることも学習した。
 サイト相互の多様性をストーリー化することは難しく、ともすれば”こじつけ”ととらえかねない例があった。多くの人が納得し、関心が高まるような解説については在来知を利用していくこととし、引き続き来年の課題として取り組むことにした。

参考文献 
1)三陸ジオパーク推進協議会. 2020. 三陸ジオパークガイドブック
2)高木秀雄・長田翔(2020)三陸ジオパークのジオサイトの評価とその活用,早稲田大学教育・総合科学学術院学術研究(自然科学編)第68号,p27-49.
3)柿崎喜宏,2023,ジオパーク活動に関わる4つのキーワードとジオ多様性の関係,日本地質学会2023大会発表要旨