13:45 〜 15:15
[O08-P42] 粒子の大きさと成長する霜柱の関係
キーワード:霜柱、土壌、毛細管現象、環境
導入
私は雪国に住んでいるため、冬が近くなると霜柱があるという環境で育ってきた。ただ単に気温の低下によって引き起こされている現象だと思っていたが、ある時ウェザーニュースによるデータを見ていると、西日本の多くでは霜柱が観測されないものの九州南部では観測されるという記載がされていた。読み進めると、火山灰が原因であるという記載もされており、九州南部ではシラス台地、関東では関東ローム層に起因して霜柱が形成されているとしていた。そこで私は粒子の大きさが霜柱の成長に影響しているのではないかと仮説を立てた。
目的
金光によると、霜柱は様々な問題を引き起こすとされている。一つ目は霜柱の形成過程で水を押し上げるため植物の根を切断してしまい、冬季間の作物の成長に影響を与えるということだ。二つ目は霜柱の形成によって水が押し上げられた結果、山腹や斜面を崩壊させてしまうことがあるということである。三つ目は霜柱の融解に伴うぬかるみであり、霜柱が表層に氷として水分をためてしまうことによって生じてしまう。この研究によって粒子の大きさと成長する霜柱の大きさの関係について明らかにするということは、上記の問題を解決する手がかりになると考える。例えば、粒子が大きいほど霜柱の成長を抑えることができるということがわかれば、作物が成長する範囲内で粒子の大きさを大きくすることによって冬季間の作物の成長をより安定にさせたり、斜面の土壌に粒子の大きい土を混ぜることによって、崩壊を防いだりといったことを行うことができる。
理論
今回の実験では霜柱の成長について土壌物理学の観点と流体力学の観点から考えることとした。その中でも特に毛細管現象は今回の実験に大きくかかわっており、先行研究によると土を形成する粒子間で隙間が発生してしまい、その発生した隙間が土壌内で連続しているために疑似的に管の役割を果たし、それに伴って毛細管力が発生しているとされている。毛細管力によって引き上げられる水位の高さh(m) は表面張力をT(Jm^-2) 、接触角をθ(rad) 、液体の密度をρ(kmg^-3) 、重力加速度を g(ms^-2)、管の半径をr(m) と置くと、
h=(2Tcosθ)/(ρgr)
で表すことができる。しかし、本実験では接触角といった濡れ性について、試料をあらかじめ濡らしておくことで考慮しないものとすることにした。そのため、使用する式は
h=(2T)/(ρgr)
である。
仮説
粒子が小さくなればなるほど霜柱が成長するという仮説を立てる。理論値としては粒子間に疑似的に発生している管の最小半径に依存しているのではないのかと考え、デカルトの円定理を用いて以下の式を立てた。
h=(6+4・3^1/2)T/(ρgr)
手法
過去に金光が日本画の材料である水晶末を使用して霜柱の生成に成功している。水晶末には番号が付いており、数字が大きくなれば粒子の大きさも大きくなっている。また、水晶末白は粒子が一番小さいものとなっている。そこで、本実験では水晶末5、7、9及び白の四種類の試料を用いることとした。粒径を顕微鏡を使用して測定したところ、表1のようになった。また、このデータに基づいて理論値を算出すると表2のようになった。実験は添付した図のような装置で行った。(図1)図の装置を冷凍庫に入れて2時間待ち、その後に取り出して成長した霜柱の長さを測定するという手順で実験を行った。実際に土を使用して予備実験を行った際には、正常に機能させることができたため、この流れに決定した。
結果
実験を10回したところ結果はグラフ1のようになった。
考察
粒子の大きさが小さくなるほど、成長する霜柱の大きさが大きくなるという傾向が見られ、また、相関も正であった。しかし、理論値の値と比較した際に、大きくずれているということや、水晶末5では霜柱が生じなかったということが発生した。そこで、実際の土で検証した時には霜柱を生じさせることができたことを活かして、実際の土に一定の量の水晶末を混ぜて作った新しい試料を元に再び実験を行った。結果はグラフ2のようになった。この実験では水晶末白を含んだ土が一番霜柱が成長するはずであったものの、結果は異なった。そのため、仮説は完全には支持されなかったものの、一部は支持されたと考えた。さらなる発展としては、試料数を増やすほか、実際に火山灰などを使用して粒子の大きさと成長する霜柱を研究したい。
参考文献
参考文献は別図を参照してください。
私は雪国に住んでいるため、冬が近くなると霜柱があるという環境で育ってきた。ただ単に気温の低下によって引き起こされている現象だと思っていたが、ある時ウェザーニュースによるデータを見ていると、西日本の多くでは霜柱が観測されないものの九州南部では観測されるという記載がされていた。読み進めると、火山灰が原因であるという記載もされており、九州南部ではシラス台地、関東では関東ローム層に起因して霜柱が形成されているとしていた。そこで私は粒子の大きさが霜柱の成長に影響しているのではないかと仮説を立てた。
目的
金光によると、霜柱は様々な問題を引き起こすとされている。一つ目は霜柱の形成過程で水を押し上げるため植物の根を切断してしまい、冬季間の作物の成長に影響を与えるということだ。二つ目は霜柱の形成によって水が押し上げられた結果、山腹や斜面を崩壊させてしまうことがあるということである。三つ目は霜柱の融解に伴うぬかるみであり、霜柱が表層に氷として水分をためてしまうことによって生じてしまう。この研究によって粒子の大きさと成長する霜柱の大きさの関係について明らかにするということは、上記の問題を解決する手がかりになると考える。例えば、粒子が大きいほど霜柱の成長を抑えることができるということがわかれば、作物が成長する範囲内で粒子の大きさを大きくすることによって冬季間の作物の成長をより安定にさせたり、斜面の土壌に粒子の大きい土を混ぜることによって、崩壊を防いだりといったことを行うことができる。
理論
今回の実験では霜柱の成長について土壌物理学の観点と流体力学の観点から考えることとした。その中でも特に毛細管現象は今回の実験に大きくかかわっており、先行研究によると土を形成する粒子間で隙間が発生してしまい、その発生した隙間が土壌内で連続しているために疑似的に管の役割を果たし、それに伴って毛細管力が発生しているとされている。毛細管力によって引き上げられる水位の高さh(m) は表面張力をT(Jm^-2) 、接触角をθ(rad) 、液体の密度をρ(kmg^-3) 、重力加速度を g(ms^-2)、管の半径をr(m) と置くと、
h=(2Tcosθ)/(ρgr)
で表すことができる。しかし、本実験では接触角といった濡れ性について、試料をあらかじめ濡らしておくことで考慮しないものとすることにした。そのため、使用する式は
h=(2T)/(ρgr)
である。
仮説
粒子が小さくなればなるほど霜柱が成長するという仮説を立てる。理論値としては粒子間に疑似的に発生している管の最小半径に依存しているのではないのかと考え、デカルトの円定理を用いて以下の式を立てた。
h=(6+4・3^1/2)T/(ρgr)
手法
過去に金光が日本画の材料である水晶末を使用して霜柱の生成に成功している。水晶末には番号が付いており、数字が大きくなれば粒子の大きさも大きくなっている。また、水晶末白は粒子が一番小さいものとなっている。そこで、本実験では水晶末5、7、9及び白の四種類の試料を用いることとした。粒径を顕微鏡を使用して測定したところ、表1のようになった。また、このデータに基づいて理論値を算出すると表2のようになった。実験は添付した図のような装置で行った。(図1)図の装置を冷凍庫に入れて2時間待ち、その後に取り出して成長した霜柱の長さを測定するという手順で実験を行った。実際に土を使用して予備実験を行った際には、正常に機能させることができたため、この流れに決定した。
結果
実験を10回したところ結果はグラフ1のようになった。
考察
粒子の大きさが小さくなるほど、成長する霜柱の大きさが大きくなるという傾向が見られ、また、相関も正であった。しかし、理論値の値と比較した際に、大きくずれているということや、水晶末5では霜柱が生じなかったということが発生した。そこで、実際の土で検証した時には霜柱を生じさせることができたことを活かして、実際の土に一定の量の水晶末を混ぜて作った新しい試料を元に再び実験を行った。結果はグラフ2のようになった。この実験では水晶末白を含んだ土が一番霜柱が成長するはずであったものの、結果は異なった。そのため、仮説は完全には支持されなかったものの、一部は支持されたと考えた。さらなる発展としては、試料数を増やすほか、実際に火山灰などを使用して粒子の大きさと成長する霜柱を研究したい。
参考文献
参考文献は別図を参照してください。