日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P48] 仙台西部 深野カルデラにおける地質構造の解明

*平塚 大志1、小林 花漣1、*木幡 陸1 (1.宮城県仙台第三高等学校)

キーワード:深野カルデラ、火山地質 、仙台西部

宮城県仙台市西部では2000年ごろから古カルデラ群の存在が指摘されている。吉田ほか(2020)により、東北地方に後期中新世から鮮新世にかけて形成された古カルデラ群の存在が明らかとなったが、5万分の1地質図などが刊行されている地域は少なく、その地質構造やカルデラの形成過程については不明な点が多い。本研究では仙台西部に分布する深野カルデラを構成する深野層の調査を行った。当地域に関する先行研究では形成メカニズムを解明しようと岩相分布や形成史の考察が成されていたものの、明確に断言するにはデータが少ないことから、研究を再構築することができると考えた。戸神山は標高504mの火山岩頸で、研究の手があまり及んでいない地域の一つである。そこで戸神山の形成メカニズムを解明するために、山体およびその周辺の岩相分布を調査し、ルートマップを作成した。鈴木ほか(2017)によって示された深野層周辺の地質図と私達の作成したルートマップを比較したところ、戸神山は深野層の縁に位置していることが分かった。このことから戸神山は深野層の縁で起きた火成活動によってできた火山岩頸である。各層の岩石の種類を特定し、岩相分布を明確にし、地質断面図の作成を行った。それらをもとに形成過程を明らかにすることを目的とした。加えて、採取した火成岩の岩石サンプルから岩石薄片を作成し、偏光顕微鏡を用いて鉱物組成の分析を行った。そこから得られた鉱物組み合わせをもとに各層の岩石の種類を決定し、形成過程について論じた。
 岩相分布をもとに地質構造を推定した結果、戸神山は麓から山間部にかけて深野層を構成する砂岩、凝灰岩、凝灰角礫岩がほぼ水平に堆積しており、戸神山本体は深野層に貫入する安山岩で構成されていると考えられる。また、凝灰角礫岩中には安山岩が含まれており、戸神山を構成する安山岩と類似しているため岩石を形成したマグマの種類について検討した。岩石薄片の分析から岩石を構成する鉱物の種類と割合を特定した。
 一方向に劈開が見られる無色鉱物を斜長石、回転させたときに約90°で色が変化し霜降り模様が確認できた無色鉱物を正長石、表面が滑らかで長石とは異なる無色鉱物を石英、四角形・六角形・八角形で淡緑色やピンク色であった有色鉱物を輝石、劈開が二方向に直交し多色性が顕著であるものを角閃石、単ニコルを用いても直交ニコルを用いても光を通さず黒色の鉱物を不透明鉱物と定義した。また、上記の条件に該当せず確認できなかった細かい鉱物を石基とした。この条件下で分析を行った結果、水平に堆積している凝灰角礫岩層に含まれる安山岩は斜長石19%正長石0%石英6%輝石4%角閃石0%不透明鉱物16%石基54%(計100%)であったのに対し、戸神山を構成する安山岩は斜長石34%正長石2%石英2%輝石2%角閃石0%不透明鉱物2%石基48%(計100%)となった。このデータを比較すると、含まれる鉱物の種類とそれらが占める割合に大きな相違は見られなかったが、斜長石、不透明鉱物の数値に差が出た。また、岩石薄片を観察した際、それぞれの岩石を構成する斑晶の大きさを比べると、凝灰角礫岩層に含まれる安山岩よりも戸神山を構成する安山岩の方が大きかった。以上より、私たちは戸神山中央で発生した火成活動が深野カルデラの縁で行われ、深野層の下層にあたる凝灰岩や凝灰角礫岩が堆積した。この際、地表に出てきた火山噴出物は急速に冷え固まり結晶が比較的小さい岩石ができた。その後、地中に残っていたマグマがゆっくりと冷えながら貫入し、戸神山の山体を構成する安山岩を形成した。侵食が進み、現在の戸神山の姿になったと結論づけた。