日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P51] 黒点観測データの正確性の検証とその活用

*渡井 陸1、伊藤 流星1、*岡山 眞人1、小川 麻由子1、小口 明日鷹1、菊池 千聖1、北島 壮太朗1、*小平 晃大1、鈴木 琴葉1、中澤 賢1、花水 絢1、伊東 翔汰1、酒井 はな1、中村 夏希1、宮坂 椎加1、横内 雅人1 (1.長野県諏訪清陵高等学校)

1.研究動機
本校の天文気象部では1950年から74年間太陽黒点の観測を行っている。しかし、これまでそのデータを活用した研究は行われてこなかった。そこで、このデータを用いて太陽活動、特に地球への影響が大きいと予想される太陽フレアの解明や予測を行おうと考えた。

2.観測手法
黒点観測は本校の設備である口径102mm 倍率60倍の屈折式望遠鏡を用いて、太陽像を直径150mmの円に投影しスケッチしている。

3.正確性の検証
(1)背景
活動の予測等にデータを活用できる正確性が担保されているかどうかを確かめるために、次の手法で本校のデータの正確性を検証した。

(2)検証手法
観測した黒点から黒点相対数を求める。黒点相対数Rは、黒点群数をg、全黒点数をsとして、R = 10g + sで算出できる。
本校の黒点スケッチから求めた黒点相対数とSILSO(ベルギー王立天文台の黒点数・太陽長期観測世界データセンター)が集計した黒点相対数を比較する。
検証1.本校とSILSOの黒点相対数を散布図に表し、2つのデータの近似曲線と決定係数を求める。
検証2.本校とSILSOの黒点相対数の比率及び補正された本校の黒点相対数とSILSOの黒点相対数の差異をそれぞれグラフ化、範囲と差異を検証する。
本研究では2015年1月から2023年11月末の観測結果を用いる。

(3)結果
図1より、全体的なグラフの概形に差異は無いことが分かった。
図2より決定係数R²が0.82493であるため、本校のデータは非常に正確性が高いと言える。

図3より、極小期では黒点相対数の比率に、極大期では黒点相対数の差異にブレが生じた。

(4)分析
 図2の僅かな誤差は、観測が当番制であるため各個人の黒点数の認識に差異が生じることや新型コロナウィルス蔓延による観測日数の減少などが挙げられる。 加えて、黒点群の判別方法が統一されていなかったことがSILSOとの黒点群数の差の原因であると考えられる。
図3では極小期では黒点相対数の比率に、極大期では黒点相対数の差異にブレが認められる。これは誤差が大きいことを示すものではなく、小さな誤差が大きく示されたものである。よって、本校とSILSOの間に大きな誤差が生じた期間は認められない。

4.黒点と太陽フレアの関係性についての検証
(1)仮説
太陽フレアは、太陽コロナに蓄積された磁気エネルギーが突発的に解放される現象であり、大きな黒点や黒点群の周辺で主に発生する。またフレア指数はフレアの規模も値の変動に影響する指数なため、黒点相対数の増減とフレア指数の変化は一致すると考えられる。

(2)手法
本研究では本校の黒点相対数のデータとNOAA(アメリカ海洋大気庁)が公開しているフレア指数の変動をグラフにして比較し、増減が一致するかを調べた。

(3)結果
図4から本校の黒点相対数とフレア指数の変動は概形より概ね一致した。

(4)考察
フレア指数の変動と黒点相対数の変動が概ね一致したため仮説は正しいと考えられる。しかし、2017年8月近辺に発生している巨大フレアについては黒点相対数の増減との関係が見られないため、巨大フレアの予測には黒点相対数以外の指標が必要になると考えられる。

5.まとめ
諏訪清陵高校の直近9年間の黒点相対数のデータは正確性があると言える。
黒点相対数の増減は、フレア指数の増減と一致するものの、巨大フレアの予測などには活用できないとわかった。

6. 今後の展望
過去の蓄積データを同じ形式で打ち込み、より長い期間での比較をすることでさらに黒点のデータの正確性を高めていきたい。また、今後正確性を高める手法として、観測者が変わることで生まれる黒点数や黒点群数の乱れに対して、観測者ごとに補正係数をつけてから統計をとりたい。
今回はNOAAのフレア指数のデータを用いたが、今後は自分たちで太陽フレアの観測を行えるようにしたい。

7.参考文献
(1) Sunspot observations at Kawaguchi Science Museum: (1972 – 2013), (2023年12月28日参照)
Hisashi Hayakawa, Daisuke Suzuki, Sophie Mathieu, Laure Lefèvre, Hitoshi Takuma, Eijiro Hiei
(2) Sunspot Index and Long-term Solar Observations https://www.sidc.be/SILSO/home
(3) Solar Flare Data https://www.ngdc.noaa.gov/stp/solar/solarflares.html