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[O08-P63] 令和6年能登半島地震から予見される海底地すべりの津波予測への反映
キーワード：令和6年能登半島地震、海底地すべり
はじめに
2024年の元日に発生した令和6年能登半島地震。マグニチュード7.6の大地震であり断層面が海底に位置していたため、石川県の能登地方沿岸を中心に津波による被害が生じた[1]。富山では地震発生後最短3分で津波が到達した。実際に気象庁が地震発生2分後に発表した津波警報では、津波は「すでに到達」とされていた。現在、津波の早期到達の原因として海底での地すべりが注目を集めている。2022年のトンガ諸島での噴火による津波を報道で目にし、断層面での岩盤破壊以外の原因で生じる津波を考慮する必要性を改めて認識した。
研究目的
気象庁では地震の震源域や深さ、規模などから津波発生の有無を推測している。しかし海底地すべりなどでの津波発生は、海底の観測装置などで検知するか実際に検潮儀で津波を観測してからでないと津波は把握できず、警報が発表されない。海底観測網の配置が不十分な海域では、警報が発表されないまま津波が到達する危険もある。震源は陸域でも海底を強い揺れが襲う地震が起きた際は、海底地すべりによる津波発生を考慮する必要性があると考える。
研究手法
令和6年能登半島地震の陸地の推計震度分布をもとに海底の震度を推定すると、海底地すべりが生じた富山湾では震度5相当であった[2]（図1）。過去の地震の事例から、震度のみで海底地すべりの起こりやすさが変わるわけではないと考え、地震動周期の違いに着目した。海底地すべりが発生しやすい地質条件として、砂や泥などの様々な物質が混在したエリアを想定した。今回の実験では、横幅15cm、縦幅12cm、奥行き6cmのアクリルケース内に、砂や泥を模した細かな土と、直径2～3mmの土玉や砂利をを合わせて120gほど入れ、地すべりの起きやすい海底の地質とした。そのケースを周期の短い揺れ（周期0.5～1秒）と長い揺れ（周期1～2秒）でそれぞれ10回揺らし、崩れた土の量を計測した。ケースに入れた土の量の13%に相当する、15gを超える諒の土が崩れた回数を記録した。ケース内の土の傾斜は45度と60度、および60度の傾斜の中腹に長さ5cmの平たい段を作ったもので実験を行った。
結果と考察
実験結果を図2に示した。周期の短い揺れでは表層にある土が崩れたケースが大半であり土が崩れた量も少量であった。逆に周期の長い揺れの場合は、深層から大量の土が崩れるケースが周期の短い揺れに比べて多かった。より海水に変動を与えやすいのは後者の場合である。また周期の長い揺れの中でも段状の地形では単純な傾斜よりも土が崩れる量が特に多く、海底ではより海水面を変動させやすくする恐れがある。令和6年能登半島地震では震源からやや離れた長野県中部や新潟県下越でも階級3を観測している[2]。長周期地震動は周期の短い揺れよりも周期の長い揺れの方が階級値が大きくなることから、富山湾でも地震動周期の長い揺れがあったと推測され、実験と整合する。よって周期が長く強い揺れ（特に震度5以上）の地震が海底を襲った場合、海底地すべりが発生する可能性が高くなると推測される。特に階段状の地形ではより警戒が必要と考える。
おわりに
海底地すべりはこれまでも大きな津波が発生した地震で発生しているが、海底地すべり単独の生じた津波被害の事例はほとんどないことなどから、重要視されていないと思われる。しかし想定外の被害をなくすには、内陸を震源とする地震であっても津波が発生しうるということを、より多くの人々に知ってもらう必要がある。東日本大震災の時は過小評価された津波予想の第1報で人々は安心してしまい被害が拡大したのではないだろうか？ 気象庁の予測手法では内陸を震源とした地震の場合、多くが「津波の心配なし」と評価される。しかし前述したように海底地すべりはすぐには把握できず、海底地すべりによる津波発生をすぐに把握することは困難であろう。しかし人々に津波のリスクを知ってもらい率先して避難の重要性を認識してもらうことはできる。気象庁の報道発表基準よりも大きな規模の地震が起きた時には、津波の心配が無いとされても、海底地すべりによる津波が突然到達する可能性を考慮し、すぐに避難できる体制を整えておくことを提唱したい。
文献
[1]気象庁 2024 「令和6年能登半島地震」について（第20報） https://www.jma.go.jp/jma/press/2402/29a/202402291400.htm l2024年4月15日閲覧
[2]気象庁 2024 長周期地震動階級1以上を観測した地震 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/ltpgm_explain/data/past/past_list.html 2024年4月15日閲覧
2024年の元日に発生した令和6年能登半島地震。マグニチュード7.6の大地震であり断層面が海底に位置していたため、石川県の能登地方沿岸を中心に津波による被害が生じた[1]。富山では地震発生後最短3分で津波が到達した。実際に気象庁が地震発生2分後に発表した津波警報では、津波は「すでに到達」とされていた。現在、津波の早期到達の原因として海底での地すべりが注目を集めている。2022年のトンガ諸島での噴火による津波を報道で目にし、断層面での岩盤破壊以外の原因で生じる津波を考慮する必要性を改めて認識した。
研究目的
気象庁では地震の震源域や深さ、規模などから津波発生の有無を推測している。しかし海底地すべりなどでの津波発生は、海底の観測装置などで検知するか実際に検潮儀で津波を観測してからでないと津波は把握できず、警報が発表されない。海底観測網の配置が不十分な海域では、警報が発表されないまま津波が到達する危険もある。震源は陸域でも海底を強い揺れが襲う地震が起きた際は、海底地すべりによる津波発生を考慮する必要性があると考える。
研究手法
令和6年能登半島地震の陸地の推計震度分布をもとに海底の震度を推定すると、海底地すべりが生じた富山湾では震度5相当であった[2]（図1）。過去の地震の事例から、震度のみで海底地すべりの起こりやすさが変わるわけではないと考え、地震動周期の違いに着目した。海底地すべりが発生しやすい地質条件として、砂や泥などの様々な物質が混在したエリアを想定した。今回の実験では、横幅15cm、縦幅12cm、奥行き6cmのアクリルケース内に、砂や泥を模した細かな土と、直径2～3mmの土玉や砂利をを合わせて120gほど入れ、地すべりの起きやすい海底の地質とした。そのケースを周期の短い揺れ（周期0.5～1秒）と長い揺れ（周期1～2秒）でそれぞれ10回揺らし、崩れた土の量を計測した。ケースに入れた土の量の13%に相当する、15gを超える諒の土が崩れた回数を記録した。ケース内の土の傾斜は45度と60度、および60度の傾斜の中腹に長さ5cmの平たい段を作ったもので実験を行った。
結果と考察
実験結果を図2に示した。周期の短い揺れでは表層にある土が崩れたケースが大半であり土が崩れた量も少量であった。逆に周期の長い揺れの場合は、深層から大量の土が崩れるケースが周期の短い揺れに比べて多かった。より海水に変動を与えやすいのは後者の場合である。また周期の長い揺れの中でも段状の地形では単純な傾斜よりも土が崩れる量が特に多く、海底ではより海水面を変動させやすくする恐れがある。令和6年能登半島地震では震源からやや離れた長野県中部や新潟県下越でも階級3を観測している[2]。長周期地震動は周期の短い揺れよりも周期の長い揺れの方が階級値が大きくなることから、富山湾でも地震動周期の長い揺れがあったと推測され、実験と整合する。よって周期が長く強い揺れ（特に震度5以上）の地震が海底を襲った場合、海底地すべりが発生する可能性が高くなると推測される。特に階段状の地形ではより警戒が必要と考える。
おわりに
海底地すべりはこれまでも大きな津波が発生した地震で発生しているが、海底地すべり単独の生じた津波被害の事例はほとんどないことなどから、重要視されていないと思われる。しかし想定外の被害をなくすには、内陸を震源とする地震であっても津波が発生しうるということを、より多くの人々に知ってもらう必要がある。東日本大震災の時は過小評価された津波予想の第1報で人々は安心してしまい被害が拡大したのではないだろうか？ 気象庁の予測手法では内陸を震源とした地震の場合、多くが「津波の心配なし」と評価される。しかし前述したように海底地すべりはすぐには把握できず、海底地すべりによる津波発生をすぐに把握することは困難であろう。しかし人々に津波のリスクを知ってもらい率先して避難の重要性を認識してもらうことはできる。気象庁の報道発表基準よりも大きな規模の地震が起きた時には、津波の心配が無いとされても、海底地すべりによる津波が突然到達する可能性を考慮し、すぐに避難できる体制を整えておくことを提唱したい。
文献
[1]気象庁 2024 「令和6年能登半島地震」について（第20報） https://www.jma.go.jp/jma/press/2402/29a/202402291400.htm l2024年4月15日閲覧
[2]気象庁 2024 長周期地震動階級1以上を観測した地震 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/ltpgm_explain/data/past/past_list.html 2024年4月15日閲覧