日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P69] サポニンによるメタン発酵の効率化とバイオガス発電の未来

*川西 琳大1、*佃 諒祐1、井川 一美1 (1.神奈川県逗子開成高等学校)

キーワード:環境

昨今、政府や自治体、NPO法人、企業によりメタン発酵バイオガス発電の導入が進んでおり、2022年3月末現在、日本では228件導入され、年間発電量は81,586キロワットとなっている。バイオガス発電とは再資源化技術の一つであり、生ごみや紙ごみ、家畜の糞尿などの有機物を嫌気環境下で微生物が分解したときに発生するメタンガスを燃料にした発電のことである。このように様々な団体がバイオガス発電の導入を推進している理由として3つの利点があげられる。まず第一に、バイオガス発電は、現状ではゴミとして焼却処分されている生ごみや紙ごみを資源として利用できる。ごみの焼却量を減らすことで、地球温暖化の主要因となっている二酸化炭素の排出を削減することができる。また、発電施設が導入された地域内においては、地元で廃棄された生ごみや家畜の糞尿を資源として地域の電力供給を支えることができる上に発酵残渣を肥料としても利用できるため、資源循環型の地域を実現できる。さらに家畜の糞尿などは調達量が変動しにくいため、他の気象条件や地理的条件に左右されやすい再生可能エネルギーと比較して、バイオガス発電は安定して電力を供給できるということも利点としてあげられる。このように様々なメリットがある一方でバイオガス発電の導入を妨げるデメリットも存在する。それは施設の導入や生ごみや家畜の糞尿の管理・選別に多額のコストがかかるということである。現状では大きな障害となっている費用対効果を高め、導入を推進していくためには発電に使われるメタン生成を効率化する必要がある。そこで私たちはメタン生成を活性化しバイオガス発電の導入の促進に貢献できないかと考え、一般的に微生物活性助剤として知られているサポニンを利用する研究を始めた。サポニンとはマメ科の植物の根、葉、茎などに含まれている苦味の成分のことで、水に溶かしてよく混ぜると石鹸のような泡を作るため、「天然の界面活性剤」といわれている。また、サポニンには抗酸化作用や免疫力向上、肥満防止、血流改善、肝機能向上などの効果が期待されており、最近では健康づくりやダイエットへの効果が注目されている。サポニンが特に多く含まれている食品としては、大豆食品やごぼうの皮などが知られている。私たちはサポニンを多く含んでいるごぼうの皮から抽出し、それをメタン発酵の過程に加え、どの程度メタン発酵が促進されるのかを調べる実験を行うことに決めた。実験には、二酸化炭素濃度測定器を用いる。メタン発酵に関わる微生物を含む泥にグルコースを加え一定期間発酵させたうえで、生成する二酸化炭素を測定する。測定できる気体は二酸化炭素のみであるため、実験は3つに分ける必要があった。第一にメタン発酵の際に副産物として生成される二酸化炭素量を測定する実験、第二にメタンの生成量を間接的に調べるために発生した気体を燃焼させその時に発生する二酸化炭素量を用いてメタン生成量を産出する実験、第三にサポニンの発酵促進効果を調べるために第一と第二の実験より発酵期間を短縮して第二の実験と同様に発生する気体を燃焼させる実験である。以上の実験を行い、私たちはサポニンによるメタン発酵の効率化とバイオガス発電の可能性について研究を行うことにした。