日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-09] 令和6年能登半島地震の発生と被害のメカニズム

2024年5月25日(土) 13:45 〜 15:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

座長:野々村 敦子(香川大学)、田村 和夫吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、松本 弾(産業技術総合研究所)

13:55 〜 14:15

[O09-01] 令和6年能登半島地震における建築物の被害概要

★招待講演

*田村 和夫1 (1.神奈川大学工学研究所 客員教授)

キーワード:能登半島地震、建築物、木造家屋、地震被害、被害調査

■背景と本報告の概要
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、最大震度7を記録し、大振幅地震動や津波、さらにこれらに起因する斜面崩壊や地盤液状化に伴う地盤変状、火災等により、建築物やインフラ構造物にも大きな被害を生じ、人々の生命を奪い、生活に甚大な打撃を与えた。
災害復旧は、建築物の被害だけでなく、インフラの復旧状況の影響など諸々の要因により困難を極め、多くの方々が1次避難、1.5次避難、2次避難といった多様な形での避難所生活を強いられ、いまだ復旧の見通しが立たない状況にある。
本報告では、建築物の被害に焦点を当て、筆者による数回の現地調査結果を紹介し、その被害要因について若干の考察を試みる。視察調査に基づくものであり、まだ詳細な検討・吟味が進んではおらず、現時点での一つの見解を示すにとどまる点をご容赦いただきたい。
 今回の地震災害では、先述のように、多様な要因で建築物の被害が生じた。以下に地震動や液状化・側方流動による被害を中心に、被害状況の概要を記述する。
■地震動による被害:
能登半島直下に震源域が存在する中で、震源域近傍の地表面で観測された地震動振幅は、建築基準法で想定しているレベルを超えるレベルの応答をもたらすものであった。これにより、震源に近い地域にて、多数の木造家屋が倒壊・大破を含む大被害を受けた。この地域は、近年も複数回の被害地震が発生している中で、広域に及ぶ大地震動による被災であった。
 特に能登半島の北部では、木造家屋の倒壊が多く発生した。大重量の屋根瓦を支持しつつ、筋交いなどの耐震要素の十分でない家屋に被害が集中した。ただ、中には、沿岸地域で津波による被害を同時に受けた建物や、液状化などの地盤変状の影響を受けた建物もあり、必ずしも地震動による揺れによる影響のみではなかった建物もある。
 鉄骨造の建物では、構造体が被害を受けたものは多くはなかったが、揺れによる変形で外壁が脱落した建物は多くみられた。震源からはやや距離のある富山や金沢でも、壁や天井などの仕上げ材の損傷・脱落などの被害は生じた。
また、鉄筋コンクリート造の建物も、柱や梁などの上部構造が大被害を受けたものは少ないが、輪島にて7階建ての建物が完全に横倒しになった事例や、傾いてしまった建物なども見られた。これらのうちの一部は液状化を伴い、基礎地盤の沈下や杭の損傷を伴うものであった可能性がある。
■地盤の液状化・側方流動による被害:
 今回の地震では、各地で広域に表層地盤の液状化による被害が見られた。震源に近い地域での被害は、建物、道路、上下水道などに及んだが、震源からやや離れた地域でも被害を生じた。特に内灘町や新潟市西区などでは、大規模な側方流動が発生し、木造家屋を中心に多数の建物が地盤の沈下や移動により大被害を受けた。内灘町では、地盤の側方流動で、1~2メートルも横に流れ、インフラも含めた深刻な被害を受けた。
 上部構造の耐震性が高い木造家屋や鉄筋コンクリート造の建物でも、基礎杭などで支持されていない場合には、液状化による地盤沈下や側方流動により、大被害を受けた。