17:15 〜 18:45
[PCG19-P06] 系外惑星大気のトランジット分光観測に向けた外気圏大気シミュレーション
キーワード:系外地球型惑星、紫外線分光、水蒸気大気
現在までに多くの太陽系外惑星が発見されており、その中にはハビタブルゾーン(HZ)内やその周辺に位置する地球型惑星と思われる惑星も発見されている。そのため、ハビタブル惑星を特徴づける基礎理論であるHZやそこに存在する惑星の性質の観測的な理解が進むことが期待されている。その中でも、HZ内縁境界を決める暴走温室効果によって、地球型惑星が持つ海洋は全て蒸発してしまい、HZ内縁より恒星近傍領域では水蒸気に富む大気が形成される。よって、HZの内縁付近では、惑星が存在する位置に応じて大きく異なる大気組成を持つと予測されている。一方で、2021年に打ち上げられたJames Webb Space Telescope(JWST)では、地球型惑星に対する観測例は乏しく、HZ内と外側に存在する主要大気組成の変化に対しての示唆は得られていない。その中でも唯一の観測例として、TRAPPIST-1が挙げられる。TRAPPIST-1系は7つの地球型惑星を保有しており、TRAPPIST-1e, f, gについてはハビタブルゾーンに位置しているため惑星大気観測のターゲットとして注目されている。JWSTによってTRAPPIST-1系の地球型惑星、特にHZ内縁より恒星近傍に存在するTRAPPIST-1bとcについてのみ観測が行われ、少なくとも厚い大気は存在しないことが示唆されている。
主に系外地球型惑星観測のターゲットとして、K型およびM型星のような低質量星周りの惑星が挙げられる。低質量星は太陽よりも活動度が高いため、低質量星周りに存在する惑星では地球が太陽から受けるX線及び極端紫外線放射(XUV放射) に比べて、はるかに大きな放射を受ける。TRAPPIST-1dはHZの内縁境界よりも恒星側に位置しているため、現在もH2Oが存在するならば暴走温室状態にあり、水蒸気大気を有していると推測される。先行研究の[Ehrenreich et al.(2015)]では、GJ436bのような水素主要大気が強いXUV放射で散逸されると、公転と恒星の重力により水素原子雲のテイルが形成されることが示唆されている。TRAPPIST-1dの水蒸気大気が強いXUV放射によって光解離することでHとOが高層大気の主成分となり水素原子が散逸されるため、GJ436bと同様にテイル構造を形成することによる原子輝線の減光が観測できる可能性がある。また、紫外線による輝線観測は外圏に存在する原子の分布、すなわち大気散逸率を反映しており、惑星大気進化に対して直接的な示唆を与えることができる。これはJWSTなどのような赤外波長を使った観測から得られる情報とは大きく異なる。そのため、外気圏大気モデルを構築し、原子輝線の観測可能性の検討が必要である。
本研究では、紫外線トランジット観測による水蒸気大気の検出可能性の検討として、水蒸気大気が存在する可能性があるTRAPPIST-1dの水素Lyαのトランジット深さを推定した。水素原子の数密度・速度分布の推定のため、先行研究を基にした外気圏大気モデルの作成を行った。本モデルでは、Lyα線による放射圧、恒星および惑星の重力、遠心力、惑星の公転運動を考慮している。モデルの主なパラメーターは恒星からのLyα線の放射強度、外気圏底からの散逸量としている。今回は、このモデルを用いた水素原子数密度分布とトランジット分光観測時のLyαのトランジット深さを見積もった結果を発表する。
主に系外地球型惑星観測のターゲットとして、K型およびM型星のような低質量星周りの惑星が挙げられる。低質量星は太陽よりも活動度が高いため、低質量星周りに存在する惑星では地球が太陽から受けるX線及び極端紫外線放射(XUV放射) に比べて、はるかに大きな放射を受ける。TRAPPIST-1dはHZの内縁境界よりも恒星側に位置しているため、現在もH2Oが存在するならば暴走温室状態にあり、水蒸気大気を有していると推測される。先行研究の[Ehrenreich et al.(2015)]では、GJ436bのような水素主要大気が強いXUV放射で散逸されると、公転と恒星の重力により水素原子雲のテイルが形成されることが示唆されている。TRAPPIST-1dの水蒸気大気が強いXUV放射によって光解離することでHとOが高層大気の主成分となり水素原子が散逸されるため、GJ436bと同様にテイル構造を形成することによる原子輝線の減光が観測できる可能性がある。また、紫外線による輝線観測は外圏に存在する原子の分布、すなわち大気散逸率を反映しており、惑星大気進化に対して直接的な示唆を与えることができる。これはJWSTなどのような赤外波長を使った観測から得られる情報とは大きく異なる。そのため、外気圏大気モデルを構築し、原子輝線の観測可能性の検討が必要である。
本研究では、紫外線トランジット観測による水蒸気大気の検出可能性の検討として、水蒸気大気が存在する可能性があるTRAPPIST-1dの水素Lyαのトランジット深さを推定した。水素原子の数密度・速度分布の推定のため、先行研究を基にした外気圏大気モデルの作成を行った。本モデルでは、Lyα線による放射圧、恒星および惑星の重力、遠心力、惑星の公転運動を考慮している。モデルの主なパラメーターは恒星からのLyα線の放射強度、外気圏底からの散逸量としている。今回は、このモデルを用いた水素原子数密度分布とトランジット分光観測時のLyαのトランジット深さを見積もった結果を発表する。
