日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM10] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:今城 峻(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)、家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、佐藤 由佳(日本工業大学)、藤本 晶子(九州工業大学)

17:15 〜 18:45

[PEM10-P04] 2003年10月24日に発生した巨大サブストームに伴う中緯度電離圏・熱圏応答の詳細解析

*森田 早紀1塩川 和夫1大塚 雄一1新堀 淳樹1惣宇利 卓弥1西岡 未知2Perwitasari Septi2山本 衛3 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.情報通信研究機構、3.京都大学生存圏研究所)

中緯度で電離圏や熱圏の変動を引き起こす要因として、磁気嵐やサブストームに伴う極域から赤道まで瞬時に侵入する電離圏電場と、極域における大気加熱によって発生した熱圏大気波動の低緯度伝搬が挙げられる。特に前者は、サブストーム開始に伴ってカレントウェッジ電流系が発達することでRegion 1電流が卓越し、夜側の中低緯度では西向き電場が侵入すると言われている。この西向き電場に伴うExBドリフトが斜め下向きにかかることで、電離圏プラズマのO+がよりO2の密度が高い低高度に侵入し、630-nm夜間大気光が増光する。これまで本研究グループは、中緯度に位置する日本の3ヶ所(陸別(43.5oN, 143.8oE)、信楽(34.9oN, 136.1oE)、佐多(31.0oN, 130.7oE))に設置された全天カメラによって得られたデータから、2観測点以上で同時に630-nm大気光が増光した7例のイベントについて報告してきた。今回はその中で特に巨大なサブストームに伴う特徴的なイベントであった2003年10月24日の例について、地磁気、大気光、GNSS-TEC、イオノゾンデ、ファブリ・ペロー干渉計を用いて、中緯度電離圏・熱圏の応答を詳細に解析した結果を報告する。
Newell and Gjerloev [2011]のサブストームリストによると、サブストームは2003年10月24日の15:25 UTに開始した。これとほぼ同時に上記3か所の日本の観測点で630-nm大気光の増光が開始しており、南北に位置する3観測点での時間遅延は見られなかった。さらに、増光開始から約30分後の16:00 UT以降は大気光が急激に減光していた。日本とオーストラリアのイオノゾンデで電離圏下部の仮想高度を観測し、サブストーム開始、つまり630-nm大気光の増光開始から電離圏が下降していることがわかった。その後、大気光の減光に伴い電離圏が急激に上昇した。この結果より、630-nm大気光強度変化の増減と電離圏高度変化に良い相関があり、電子密度の変化ではなく電離圏高度変化に伴うO+とO2の密度の積の変化によりこの大気光変動が発生したと考えられる。信楽に設置されたファブリ・ペロー干渉計では、サブストーム開始に伴う風速の変動は見られなかった。これらの結果より、サブストーム開始直後の電離圏の下降は西向き電場の侵入が原因であると示唆される。減光時の電離圏の上昇も風速の大きな変動は見られなかった。オーバーシールディングに伴う東向き電場はサブストーム開始から約15-20分後に発生すると言われており、今回の開始から約30分後の電離圏上昇に寄与している可能性がある。国内に設置された国土地理院GNSS受信機網から得られたデータを用い、衛星-受信機間で得られた全電子数の1時間移動平均からの偏差を調べた。その結果、大気光と同様にサブストーム開始後に、30-45oNの範囲で同時に全電子数が約0.1 TECU程度増加したことが分かった。これはプラズマ圏からの供給により発生したと考えられる。今後はこれらの観測結果と合わせて極域と中緯度のつながりや電場の発生原因を明らかにするために、TIEGCMシミュレーションなどのモデルとの比較を行っていく予定である。