日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Space Weather and Space Climate

2024年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Aronne Mary(NASA Goddard Space Flight Center)、伴場 由美(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、Pulkkinen Antti(NASA Goddard Space Flight Center)、座長:伴場 由美(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、Mary Aronne

11:45 〜 12:00

[PEM11-14] Development of a large-flare warning system based on the κ-scheme : correlation between flare index and high free energy region

*伴場 由美1塩田 大幸1、久保 勇樹1草野 完也2 (1.国立研究開発法人 情報通信研究機構、2.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:宇宙天気、予測、太陽フレア、太陽磁場

情報通信研究機構(NICT)における宇宙天気予報業務では、24時間以内に発生が予想さ れるフレアの最大規模を予報している。特に大規模なフレアが観測された際などには臨時 情報を配信しているが、地球からフレアを観測した時点で既にその影響(例えば、デリン ジャー現象による短波通信への影響)は現れており、フレアによる通信等への影響を回 避・軽減するための対応が間に合わない可能性が高い現状である。そこで、少なくともフ レア発生の数時間「前」に、その発生を確定的に予測し注意喚起する「フレア警報」の提 供が求められる。一方で、近年、太陽表面で発生する不安定性の理論(ダブルアーク不安 定性, Ishiguro & Kusano 2017)に基づきフレア発生の条件を導くことで、大規模フレアを 予測する新しい物理モデル「κスキーム」が開発された(Kusano et al. 2020)。

そこで本研究では、NICT宇宙天気予報業務への実装を目指した、κスキームに基づく大規 模フレア発生予測および警報配信を行うシステムの構築を行なっている。まずSolar Dynamics Observatory (SDO) により取得した太陽活動領域の光球面磁場データから、非 線形フォースフリー磁場(NLFFF)モデリングにより3次元コロナ磁場を外挿し、活動領 域の中で特にエネルギーが蓄積されている「High Free Energy Region (HiFER)」を算出し た。次に HiFER 内に含まれる磁気中性線上のすべての点に対して、ダブルアーク不安定性 によりフレアを起こすために必要なリコネクション領域の臨界半径rc、およびその領域で 実際にリコネクションが起きた際に解放可能な最小のエネルギーErを算出した。Kusano et al. 2020 では、X2クラス以上の大規模な太陽フレアは rc < 1 [Mm], Er > 4x1031 [erg] の点 から起こることが示唆されており、本研究では HiFER の出現や(rc, Er)の条件により段 階的にXクラスフレア発生「注意報」、「警報」を出すことを目指している。

当該システムの開発過程で、我々はNICTの宇宙天気予報業務にHiFERのオンラインビュー アを提供した。 太陽面上の各活動領域中のHiFERと、各HiFERに蓄積されたエネルギーを 準リアルタイムで容易に確認することが可能である。 NLFFF外挿は活動領域の「放出可能 エネルギー」を求めるために必須ですが、膨大な計算リソースを必要とする。一方、 HiFERの「蓄積エネルギー」は、活動領域のベクトル磁場データのみを使用して簡単に計 算可能である。もし発生するフレアの規模とHiFERの蓄積エネルギーの間に相関関係があ るなら、フレアの予測に役立つため、我々はその相関関係を調査した。発表ではその経過 を報告する。