[P-EM11] Space Weather and Space Climate

[PEM11-P06] 太陽水素ライマン線の特徴と地球電離層に及ぼす影響

*大窪 遼介¹、渡邉 恭子¹、北島 慎之典¹、増田 智²、家田 章正²、陣 英克³、垰 千尋³、西岡 未知³ (1.防衛大学校、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所、3.情報通信研究機構)

キーワード：太陽彩層・遷移層、太陽極端紫外線放射、ライマン線、地球電離圏、GAIAモデル

太陽からのX線と極端紫外線（EUV）の放射は、地球の電離層の形成に寄与している。ライマンα線(121.6 nm)は、太陽EUV放射の中で最も強いライン放射であり、彩層と遷移層におけるEUV放射照度の56%を占めている(Fontenla et al., 1991)。しかし、ライマンβ線（102.6 nm）を含む他のライマン系列のライン放射は、ライマンα線よりも放射照度は小さいが、波長が短いため、放射エネルギー自体はライマンα線よりも大きい。したがって、これらのライマン系列の放射は、ライマンα線より地球の電離層に影響を与えている可能性がある。
Lemaire et al. (2012)は、第23太陽活動周期の一部（2002-2008年）におけるライマンα線とライマンβ線の関係を調べ、ライマンα/β比が極大期と極小期で変化することを明らかにした。そこで本研究では、Lemaire et al. (2012)と同様に、TIMED/EGS-SEEで観測されたライマンα線とβ線の変動を第24太陽活動周期においても調べ、またこれらのライマン線放射と地球電離層の電子密度変動との関係を調べた。一方、Lemaire et al. (2012)では太陽フレア時におけるライマンα線とβ線の関係については言及されていなかった。そこで本研究では、SDO/EVEとGOES/EUVS-Eの観測データを用いて、41件の太陽フレアにおけるライマンα/β比の変動についても調べた。また、これらの太陽放射の地球電離層への影響を検証するため、GAIAモデル(Jin et al., 2011) を用いて、各EUV放射波長におけるイオン生成率の高度分布を計算した。
今回は、これらの解析結果と計算結果を用いて、ライマン線放射の地球電離層への影響について議論する。