日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:細川 敬祐(電気通信大学大学院情報理工学研究科)、Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)

17:15 〜 18:45

[PEM12-P18] 全地球測位衛星システム受信機網を用いた南アフリカ上空の中規模伝搬性電離圏擾乱の統計解析

*野田 大晟1大塚 雄一1新堀 淳樹1惣宇利 卓弥1西岡 未知2Perwitasari Septi2、Katamzi-Joseph Zama Thobeka3 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.情報通信研究機構、3.南アフリカ国立宇宙機関)

キーワード:中規模伝搬性電離圏擾乱、全地球測位衛星システム受信機網、全電子数、大気重力波、スポラディックE層、パーキンス不安定性

電離圏F領域で起こる時間的・空間的な電子密度変動である中規模伝搬性電離圏擾乱(Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbance; MSTID)により、精密性が必要とされる衛星測位において、測定誤差を生じさせる可能性がある。この現象は、全地球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System; GNSS)を用いて、衛星と受信機間の全電子数(TEC)を測定し、多数の受信機で得られたTECの変動成分を水平二次元マップ上にプロットすることにより、その水平構造を観測することができる。これまで、日本やヨーロッパなどのGNSS受信機網が整備されている地域ではこの手の観測が行われてきた。本研究では、近年整備が進められた南アフリカにおいて、初めてこの手法を用いた観測を試み、2022年の1年間におけるデータを取得し、MSTIDの発生頻度や伝搬方向に関して統計的に解析を行った。

各GNSS衛星と受信機間で得られたTECの1時間移動平均からの偏差の水平二次元分布を調べ、南アフリカ上空におけるMSTIDの発生頻度及び伝搬方向の季節・地方時変化を統計的に明らかにした。MSTID発生頻度の統計データからは、6月至点付近には昼間に一次ピークを、夜間に二次ピークが見られ、12月至点付近には夜明けと日暮れに低頻度だが見られた。また、伝搬方向の統計データからは、季節問わず、昼間に主に北東へ、夜間に主に西へ伝搬していることが分かった。これらの結果は、MSTIDの生成機構が昼間と夜間では異なり、それぞれの生成機構に季節変化が存在することを示唆している。
昼間MSTIDは冬に頻度が高く、主に赤道方向へ伝搬することから、これまでの理論通り大気重力波を発生源とする可能性が高い。また、夜間のMSTIDは西へ伝搬するものが多く、南アフリカは地磁気の偏角が西に向いていることを考えると、従来の説の通り、パーキンス不安定及びE-F領域間の電磁力学的結合による影響が大きいと考えられる。しかし、南アフリカにおける夜間のMSTIDの発生頻度は、他の地域における発生頻度よりも低いことが明らかになった。

本研究では、得られた統計データと先行研究のデータとの比較を行い、南アフリカで観測されたMSTIDsの統計的な特徴についてまとめた。見られた類似点や相違点について、それぞれ考え得る原因の考察をした。本発表では、他地域と比べて発生頻度が低いという特徴が見られた夜間のMSTIDに関し、その原因について主に議論を進める。