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[PEM12-P20] HFドップラー観測とGPS電波掩蔽観測を用いた2022年台風14号(NANMADOL)発達に伴う電離圏擾乱の解析

キーワード:2022年台風14号、電離圏擾乱、HFドップラー観測、GPS電波掩蔽観測
台風による電離圏擾乱はGPS-TECを用いたシステムによる解析が多く、数秒や数kmでの細かいスケールの解析や、より空間スケールの詳細な伝搬特性の研究が進んでいない。そこで本研究では、時間分解能に優れ、送信周波数に応じて観測高度を決めることが出来るHFドップラー(HFD)観測と、高度分解能に優れ、電子密度の高度プロファイルを算出することが出来るGPS電波掩蔽観測を用いることにより、台風によって引き起こされた電離圏擾乱の3次元の詳細な伝搬特性を解析することを目的としている。解析対象は2022年9月に発生した台風14号(NANMADOL)である。この台風は9月12日に日本の南海上で熱帯低気圧として発生し、20日6時UTに消滅した。解析では接近始めた15日から通過後静穏日の21日までとする。本台風の観測には電気通信大学を中心に5機関にて運営されているHFD観測とTaiwan Analysis Center for COSMIC(TACC)によって提供されているFormosat-7/COSMIC-2によるGPS電波掩蔽観測を利用した。HFD観測システムはドップラー効果を利用して電離圏の高度変化を観測することが出来る。HFD観測で与えられたドップラー周波数の時系列データからダイナミックスペクトル解析を導出し、台風の周波数特性を調べた。GPS 電波掩蔽観測では、電波の屈折特性を解析することで高度方向の電子密度プロファイルデータを導出する。これを高度方向にウェーブレット変換することで変動の波長依存性を解析した。
GPS電波掩蔽観測とHFドップラー観測の同時観測解析の結果、台風の日本接近時に波長16 km の変動成分が増加し、最接近時には波長2 km の変動成分の短周期成分まで上昇した。波長2~32 kmの変動の周波数は数10~数100 mHz に相当し、HFD 観測でも同様の高周波成分の変動成分の上昇が確認できた。続いてHFD 菅平観測点を用いて、昼間の時間帯における電離圏変動を観測したところ、高周波成分の変動に加え、台風の勢力に伴って変動する低周波数(数 mHz)成分の変動が確認できた。台風により発生する大気波動は水平波数と周波数の関係から音波モードと大気重力波モードの2 種類の伝搬モードに分けることが出来る。GPS 電波掩蔽観測とHFD観測の同時観測や菅平観測点での数10 mHz の高周波成分の変動増加は音波モードによるものであると考えられる。一方、菅平観測点のデータ解析で確認できた低周波数成分の変動増加は大気重力波モードによるものであると考えることが出来る。台風の勢力と距離に伴って変動成分の増大がみられた。以上のことから台風に伴って発生する内部重力波は2つの伝搬特性を持って電離圏に影響を与えると考えられる。
GPS電波掩蔽観測とHFドップラー観測の同時観測解析の結果、台風の日本接近時に波長16 km の変動成分が増加し、最接近時には波長2 km の変動成分の短周期成分まで上昇した。波長2~32 kmの変動の周波数は数10~数100 mHz に相当し、HFD 観測でも同様の高周波成分の変動成分の上昇が確認できた。続いてHFD 菅平観測点を用いて、昼間の時間帯における電離圏変動を観測したところ、高周波成分の変動に加え、台風の勢力に伴って変動する低周波数(数 mHz)成分の変動が確認できた。台風により発生する大気波動は水平波数と周波数の関係から音波モードと大気重力波モードの2 種類の伝搬モードに分けることが出来る。GPS 電波掩蔽観測とHFD観測の同時観測や菅平観測点での数10 mHz の高周波成分の変動増加は音波モードによるものであると考えられる。一方、菅平観測点のデータ解析で確認できた低周波数成分の変動増加は大気重力波モードによるものであると考えることが出来る。台風の勢力と距離に伴って変動成分の増大がみられた。以上のことから台風に伴って発生する内部重力波は2つの伝搬特性を持って電離圏に影響を与えると考えられる。