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[PEM12-P23] 全電子量マップおよび磁場データを用いた台風がもたらす電離圏擾乱の定量的解析

キーワード:電離圏擾乱、台風、地磁気、全電子量
近年の研究で、台風のような激しい対流活動が電離圏に与える顕著な影響が明らかになってきた。電離圏環境の変動を知る手法のひとつとして、全地球測位システム(Global Positioning System, GPS)データを用いた全電子数(Total Electron Content , TEC)の観測がある。これまでの研究は、台風によって引き起こされる個別または限定された数の電離圏擾乱を解析することに焦点を当てていたが、電離圏擾乱と磁場の変動との相関関係については十分に調査されていない。本研究では、GPSデータから生成されたTECマップを通じて、台風によって誘発される電離圏擾乱について定量的な解析を行う。さらに、九州大学の国際宇宙惑星環境研究センターが運用するMAGDAS(Magnetic Data Acquisition System)グローバル磁場観測ネットワークからの磁場データの詳細な調査により、電子密度の変動に対する電離圏電流のダイナミクスを明らかにする。情報通信研究機構(NICT)が公開しているdetrended TECデータを活用し、2019年から2021年の間に、地磁気的に静穏な日に日本に接近または上陸した10個の台風に焦点を当てた。この結果は、台風イベントを通じて顕著なTEC変動を明らかにした。特に、台風通過中には、TEC変動が3つのパターン(A)単調に増加する、(B)空間的に移動していて増加する、(C)単調に減少することを示した。分析した10個の台風のうち、7イベントがタイプ(A)、1イベントがタイプ(B)、2イベントがタイプ(C)に分類された。特に、タイプ(B)のイベントは、夜間に発生する中規模移動性電離圏擾乱に関連している可能性がある。これらの現象を、detrended TECマップとMAGDAS磁場データから導出された電離圏電流と相関させることによって議論する。