日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Dynamics of the Inner Magnetospheric System

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:桂華 邦裕(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Sarris E Sarris(Democritus University of Thrace)、Thomas G Thomas(Dartmouth College)


17:15 〜 18:45

[PEM13-P16] 曲率のある背景磁場内での線形MHD波動についての局所標構を用いた解析に基づく内部磁気圏内でのULF波動の考察

*礒野 航1吉川 顕正2加藤 雄人1川面 洋平3,1熊本 篤志1 (1.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、2.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3.東北大学 学際科学フロンティア研究所)

キーワード:ULF波動、プラズマ物理学

ULF波とはUltra low frequency wavesの略であり、地球内部磁気圏で観測される低周波振動、具体的には数秒から数百秒の周期の振動を指す。Pc4-5と呼ばれるULF波の一種は、数十秒から数百秒の周期を持ち(Jacobs et al, 1964)、磁気流体力学(MHD)近似によって記述することができる。ULF波の励起と伝搬過程は広く研究されている。磁力線共鳴(FLR)は、磁気圏外で励起され伝播するファストモードとアルフベン波が共鳴する過程である。この過程は内部磁気圏において大規模なアルフベン波を励起し、Pc4-5現象に伴う磁力線振動を説明する(Dungey, 1954; Chen & Hasegawa, 1974; Southwood, 1974)。これは、磁気圏外をエネルギー源とするULF波の励起過程におけるもっとも重要なプロセスの一つである。FLRのプロセスは、直交座標系、円筒座標系、双極子座標系において理論的に広く研究されてきた(e.g., Mann et al, 1995; Allan et al,1986; Wright & Elsden, 2016)。その結果、プラズマの質量密度、磁場強度、磁力線の長さの空間変化に伴いアルフベン速度が内部磁気圏内で変化し、ファストモードとアルフベン波が共鳴する領域が作られることが明らかになってきた。また、近年では太陽風の影響も加味した3次元でのMHDシミュレーションも行われており(Elsden & Wright 2022)、実際にアルフベン波とファストモードが共鳴する過程は徐々に明らかになってきている。FLRの過程で着目されている要素の一つに背景磁場の幾何的な形状がある。Wright & Elsden (2016)は双極子磁場におけるMHD方程式系を用いて、FLRにより生じるアルフベン波の発生条件や偏波特性に双極子の尺度因子が大きく影響していることを理論的に示した。

我々はこの視点の研究をさらに発展させ、任意の背景磁場形状において、背景磁場形状の幾何的な特質、すなわち磁力線の曲率やねじれがどのような働きをしてFLRを発生させるかについての解析を行った。現実の内部磁気圏は双極子状の磁場やポテンシャルによりあらわすことができる磁場ではなく、太陽風の影響などにより大きく形を変化させる。そのためFLRが生じる際の過程を、磁場全体の形状ではなく磁力線の幾何的な形状に着目して明らかにすることで、FLRが生じる領域について、現実に近い磁気圏形状においても理論的な検討を行うことが可能になると考える。解析手法としてYoshikawa (JpGU 2023)の手法を用い、磁場の接線方向、法線方向、従法線方向の3軸を取る局所標構を採用した。局所標構を用いることにより、任意の背景磁場形状が持つ幾何的な特質がもたらす影響についての解析を行うことが可能となる。

局所標構におけるMHD方程式を導出して線形化を行ったのち、プラズマの振動方向やその変化に対して磁力線の曲率やねじれ率がどのような影響を及ぼすかについての検討を行った。その結果、太陽風動圧による磁気圏の圧縮や、フラックスチューブのねじれなどによって、アルフベン波の励起に影響を及ぼす可能性が示唆された。特に、ULF波動の振動方向について、トロイダル成分とポロイダル成分間での変化率が、等ポテンシャル磁場を仮定した場合に比べて大きくなることが示された。