17:15 〜 18:45
[PEM16-P06] MF-HF帯スペクトル観測結果に基づく太陽電波II型バースト発生源の移動速度の研究

キーワード:太陽電波バースト (SRB) 、コロナ質量放出(CME)、宇宙天気
コロナ質量放出 (CME) は活発な太陽活動の影響により,大規模なプラズマの塊が惑星間空間へ放出される現象である.CMEが生み出すMHD衝撃波の伝搬により,様々なプラズマ素過程を経てII型太陽電波バースト (SRB II) が発生する [e.g. Uchida, 1960].プラズマ密度モデル (e.g. Pohjolainen et al., 2007) とSRB IIの放射周波数に基づく考察から,CMEの太陽コロナから惑星間空間に至る移動速度の推定が可能となる.CMEが地球に到達すると地球周辺の宇宙環境へ大きな影響をもたらすため,光速で伝播するSRBの周波数時間変化を使ってCMEの速度,位置を正確に予測することが宇宙災害に対処する鍵となる.
本研究では,Wind衛星搭載Waves観測データ [0.02-14 MHz; Bougeret et al., 1995] と東北大学理学研究科が所有する飯舘木星銀河電波観測所のHF帯アンテナ [15-40 MHz; 熊本 他,2011] による観測データを用いて,2022年6月13日に観測されたSRB IIの発生源の移動速度について考察した.解析対象としたSRB IIイベントは03:12UTに発生したCMEに伴う現象であり,15-40 MHz の帯域で約10分間の継続時間で観測された.スペクトルに現れたSRB IIがFundamentalレーンとHarmonicレーンの両方からなると仮定して,放射周波数とその時間変化を読み取った.密度モデルとしてBaumbach-Allenモデル [Baumbach, 1938; Allen, 1947] に係数10を乗じたものを用いたところ,放射周波数 36-25 MHz は太陽光球面から 1.7-2.1 Rs (Rsは太陽半径) に対応しており,発生源の速度は250-450km/s と見積もられた.この結果は,同時刻におけるSOHO/LASCO C2,C3画像からの推定速度200-500 km/sと概ね一致していた.さらに,HF帯アンテナで観測されたSRB IIの周波数変化率には時間変化が認められており,推定された発生源の移動速度についても 03:24:20UT から03:28:00UT では 200-320 km/s であることに対して, 03:2820-03:34:20UT では 300-450km/s と見積もられた.CMEは太陽風の生成に起因する半径方向の圧力勾配力 [e.g. MacQueen & Fisher, 1983] やコロナ中の磁場構造による力 [e.g. Chen & Krall, 2003] により加速すると考えられており,本研究の解析結果はCMEの加速に伴うバースト源移動速度の時間変化に対応する可能性がある.一方,Wind衛星では 03:31:00UT から 06:03:00UT に至る約2時間30分にわかり 1.8-14 MHz においてSRB IIが観測された.Wind衛星搭載Wavesのダイナミックスペクトルデータについても同様に速度推定を行うと,Wind衛星がSRB IIを観測した全時間帯で 150-220 km/s となり,HF帯アンテナからの速度推定結果よりも小さい値となった.この違いを生む要因としては,太陽近傍と惑星間空間で異なる密度モデルを選ぶ必要性,SOHO/LASCO C2,C3によるCMEコロナグラフ画像の時間分解能 (6分または12分)に起因する推定誤差ならびにCME先端高度の読み取り誤差などが挙げられる.また,今回の速度推定で用いた,CME先端にSRB II発生源が位置していたとする仮定の妥当性についても検討の余地がある.解析結果に基づいて,スペクトル構造を決定する物理素過程ならびにCMEとバースト源の伝搬過程について考察する.
本研究では,Wind衛星搭載Waves観測データ [0.02-14 MHz; Bougeret et al., 1995] と東北大学理学研究科が所有する飯舘木星銀河電波観測所のHF帯アンテナ [15-40 MHz; 熊本 他,2011] による観測データを用いて,2022年6月13日に観測されたSRB IIの発生源の移動速度について考察した.解析対象としたSRB IIイベントは03:12UTに発生したCMEに伴う現象であり,15-40 MHz の帯域で約10分間の継続時間で観測された.スペクトルに現れたSRB IIがFundamentalレーンとHarmonicレーンの両方からなると仮定して,放射周波数とその時間変化を読み取った.密度モデルとしてBaumbach-Allenモデル [Baumbach, 1938; Allen, 1947] に係数10を乗じたものを用いたところ,放射周波数 36-25 MHz は太陽光球面から 1.7-2.1 Rs (Rsは太陽半径) に対応しており,発生源の速度は250-450km/s と見積もられた.この結果は,同時刻におけるSOHO/LASCO C2,C3画像からの推定速度200-500 km/sと概ね一致していた.さらに,HF帯アンテナで観測されたSRB IIの周波数変化率には時間変化が認められており,推定された発生源の移動速度についても 03:24:20UT から03:28:00UT では 200-320 km/s であることに対して, 03:2820-03:34:20UT では 300-450km/s と見積もられた.CMEは太陽風の生成に起因する半径方向の圧力勾配力 [e.g. MacQueen & Fisher, 1983] やコロナ中の磁場構造による力 [e.g. Chen & Krall, 2003] により加速すると考えられており,本研究の解析結果はCMEの加速に伴うバースト源移動速度の時間変化に対応する可能性がある.一方,Wind衛星では 03:31:00UT から 06:03:00UT に至る約2時間30分にわかり 1.8-14 MHz においてSRB IIが観測された.Wind衛星搭載Wavesのダイナミックスペクトルデータについても同様に速度推定を行うと,Wind衛星がSRB IIを観測した全時間帯で 150-220 km/s となり,HF帯アンテナからの速度推定結果よりも小さい値となった.この違いを生む要因としては,太陽近傍と惑星間空間で異なる密度モデルを選ぶ必要性,SOHO/LASCO C2,C3によるCMEコロナグラフ画像の時間分解能 (6分または12分)に起因する推定誤差ならびにCME先端高度の読み取り誤差などが挙げられる.また,今回の速度推定で用いた,CME先端にSRB II発生源が位置していたとする仮定の妥当性についても検討の余地がある.解析結果に基づいて,スペクトル構造を決定する物理素過程ならびにCMEとバースト源の伝搬過程について考察する.
