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[PEM17-07] Kinetic Alfvén waveによるオーロラ電子加速過程の理論・数値的考察

キーワード:分散性Alfvén波、kinetic Alfvén waves、電子加速過程、波動-粒子相互作用、ランダウ共鳴
Kinetic Alfvén wave (KAW)は、磁力線平行方向の波長が長く、磁力線垂直方向の波長がイオンLarmor半径程度の電磁波動である。KAWは磁力線平行方向の電場成分δE||を持ち、電子やイオンを磁力線に沿って加速する[e.g., Hasegawa, 1976]。KAWは地球磁気圏のサブストームと関連があると考えられており[e.g., Stasiewicz et al., 2000]、KAWが電子を磁力線平行方向に数keV程度のエネルギーに加速し、オーロラ増光を引き起こすとされている[e.g., Duan et al., 2016; Keiling et al., 2002]。KAWによる電子加速過程では、電子の磁力線平行方向の速度v||が位相速度Vph||と同程度である、すなわち電子がLandau共鳴条件を満たす場合に、電子が波に捕捉され、加速されながら高緯度に輸送され得ることが知られている[e.g., Artemyev et al., 2015; Damiano et al., 2016]。更に、小さい第一断熱不変量μを持つ捕捉電子はミラー力の影響を殆ど受けずに電離圏に到達することが指摘されている[Watt and Rankin, 2009]。しかし、電子が捕捉される条件や電離圏に到達できる電子の条件などのKAWの電子加速過程の詳細については未解決の問題が残されている。
本研究では、KAWによる電子加速過程に対して、コヒーレントな電磁波動に捕捉された荷電粒子の加速過程の研究で用いられてきた2次共鳴理論[e.g., Omura et al., 2008]を導入し、電子加速過程の詳細を調査する。KAWに捕捉された電子の速度位相空間上の運動は、KAWのVph||の近傍における捕捉領域の形成により特徴づけられ、電子から見たKAWの位相ψについての単振動と、背景磁場勾配に起因する不均一性因子Sによる影響との重畳として記述される。ここで、捕捉電子が磁力線平行方向に移動することで、その位置に応じて背景磁場勾配とSが変化する。電子が捕捉され得るエネルギー範囲はSの増加に伴い縮小することから、電子は背景磁場勾配の大きい高緯度に向かうにつれて波の捕捉から外れやすくなる。理論計算から、地球磁気圏L=9の磁力線上で、δE||が磁気赤道で1 mV/m程度であり伝播中に減衰しない場合、電子は磁気緯度36°程度までKAWに捕捉され得ることが示された。テスト粒子計算を行うことで、捕捉電子のv||はVph||程度である一方で、波の捕捉から外れた後に電子のエネルギーは大きく変化し得ることが確認された。そこで、電離圏に到達できる電子に対象を絞り、波の捕捉から外れた後の運動に焦点を当てて解析を行った。その結果、磁気緯度10度-20度にて数百eV-2 keVであった捕捉電子が捕捉から外れた後に、速度位相空間上で波が電子を加速するψ∈(-π, 0)に位置しながら高緯度に到達することで、最大で約10.5 keVまで電子が加速されることが明らかになった。また電離圏での運動エネルギーの最大値と、電子加速を通してμが保存されることを考慮すると、電離圏に到達する電子の必要条件としてμが約0.23 eV/nT以下であることが考えられる。本発表では以上の理論検討や結果に加えて、電子が効率的に加速される領域や加速過程を通して電子が得るエネルギー量について議論する。
本研究では、KAWによる電子加速過程に対して、コヒーレントな電磁波動に捕捉された荷電粒子の加速過程の研究で用いられてきた2次共鳴理論[e.g., Omura et al., 2008]を導入し、電子加速過程の詳細を調査する。KAWに捕捉された電子の速度位相空間上の運動は、KAWのVph||の近傍における捕捉領域の形成により特徴づけられ、電子から見たKAWの位相ψについての単振動と、背景磁場勾配に起因する不均一性因子Sによる影響との重畳として記述される。ここで、捕捉電子が磁力線平行方向に移動することで、その位置に応じて背景磁場勾配とSが変化する。電子が捕捉され得るエネルギー範囲はSの増加に伴い縮小することから、電子は背景磁場勾配の大きい高緯度に向かうにつれて波の捕捉から外れやすくなる。理論計算から、地球磁気圏L=9の磁力線上で、δE||が磁気赤道で1 mV/m程度であり伝播中に減衰しない場合、電子は磁気緯度36°程度までKAWに捕捉され得ることが示された。テスト粒子計算を行うことで、捕捉電子のv||はVph||程度である一方で、波の捕捉から外れた後に電子のエネルギーは大きく変化し得ることが確認された。そこで、電離圏に到達できる電子に対象を絞り、波の捕捉から外れた後の運動に焦点を当てて解析を行った。その結果、磁気緯度10度-20度にて数百eV-2 keVであった捕捉電子が捕捉から外れた後に、速度位相空間上で波が電子を加速するψ∈(-π, 0)に位置しながら高緯度に到達することで、最大で約10.5 keVまで電子が加速されることが明らかになった。また電離圏での運動エネルギーの最大値と、電子加速を通してμが保存されることを考慮すると、電離圏に到達する電子の必要条件としてμが約0.23 eV/nT以下であることが考えられる。本発表では以上の理論検討や結果に加えて、電子が効率的に加速される領域や加速過程を通して電子が得るエネルギー量について議論する。