日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ科学

2024年5月31日(金) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学大学院システム情報学研究科)、諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、梅田 隆行(北海道大学 情報基盤センター)、座長:諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、簑島 敬(海洋研究開発機構 数理科学・先端技術研究開発センター)

10:00 〜 10:15

[PEM17-15] OSIRIS-Rex サンプルリターンカプセルの再突入に伴う超低周波電波放射の観測

*渡邉 堯1、小林 美樹2、加藤 泰男3塩川 和夫3大矢 浩代4、鈴木 和博2 (1.情報通信研究機構、2.日本流星研究会、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所、4.千葉大学大学院工学研究院)

キーワード:宇宙機、再突入、超低周波電波、方向探知

明るい流星(火球)の発生や宇宙機再突入に伴う、VLF帯などの超低周波電波領域における電波放射の存在については、1980年代から続く議論があるが、2020年12月に実施された「はやぶさ2」サンプル・リターンカプセル(SRC)の再突入において、雷起源の空電のようなパルス状信号ではないVLF電波放射が、再突入の最大光度時に検出された(Watanabe他, WGN, the Journal of the IMO 51:3, 2023)。電波の発生は、高速で移動するSRCの周辺のプラズマ領域に形成された、電荷分離領域における放電によることが推定される。そこで、2023年9月24日(UTC)に、米国ネヴァダ・ユタ両州にかけて実施された OSIRIS-Rex小惑星探査宇宙機SRCの再突入時に、SRCの最大加熱と最大減速が発生する位置に近い、ネヴァダ州ユーリカ地区においてVLF電波観測を実施した。宇宙機再突入と電波放射との関連をより明確化するため、NS・EW方向の直交ループアンテナと、垂直ロッドアンテナによる方探観測を行った。但し1地点における観測のため、得られる情報は電波発生源の方位・高度角に限られるが、SRCの位置情報や波形のスペクトル解析により、SRC起源の電波放射であるかどうかの推定の信頼性が、大幅に向上することが期待される。波形・スペクトル解析では、はやぶさ2のSRC再突入時に検出されたような非パルス状信号が、断続的に受信されていることが分かり、これらの信号について、直線偏波を仮定したゴニオメータ方式の方位測定と、垂直アンテナの指向性を利用した高度角の推定を行った。観測は100 Hz – 96 kHzの広帯域で行われたため、各方向の周波数成分間の位相差が約10度以内となる周波数領域のみを使用した解析とした。観測時間帯における、顕著な雷運活動地域(主に五大湖西岸とメキシコ湾領域)の方位との比較から、方位の測定精度は10度程度と見込まれるが、高度角については、特に高度角が大きい場合、20度程度の不確定さが見込まれる。この解析によって得られた上記の非パルス性信号の方位・高度角は、誤差の範囲内で、SRCの減速や高度変化が顕著ではない火球フェイズにおいて、SRCの推定位置と良い一致を示している。