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[PEM17-15] OSIRIS-Rex サンプルリターンカプセルの再突入に伴う超低周波電波放射の観測
キーワード:宇宙機、再突入、超低周波電波、方向探知
明るい流星(火球)の発生や宇宙機再突入に伴う、VLF帯などの超低周波電波領域における電波放射の存在については、1980年代から続く議論があるが、2020年12月に実施された「はやぶさ2」サンプル・リターンカプセル(SRC)の再突入において、雷起源の空電のようなパルス状信号ではないVLF電波放射が、再突入の最大光度時に検出された(Watanabe他, WGN, the Journal of the IMO 51:3, 2023)。電波の発生は、高速で移動するSRCの周辺のプラズマ領域に形成された、電荷分離領域における放電によることが推定される。そこで、2023年9月24日(UTC)に、米国ネヴァダ・ユタ両州にかけて実施された OSIRIS-Rex小惑星探査宇宙機SRCの再突入時に、SRCの最大加熱と最大減速が発生する位置に近い、ネヴァダ州ユーリカ地区においてVLF電波観測を実施した。宇宙機再突入と電波放射との関連をより明確化するため、NS・EW方向の直交ループアンテナと、垂直ロッドアンテナによる方探観測を行った。但し1地点における観測のため、得られる情報は電波発生源の方位・高度角に限られるが、SRCの位置情報や波形のスペクトル解析により、SRC起源の電波放射であるかどうかの推定の信頼性が、大幅に向上することが期待される。波形・スペクトル解析では、はやぶさ2のSRC再突入時に検出されたような非パルス状信号が、断続的に受信されていることが分かり、これらの信号について、直線偏波を仮定したゴニオメータ方式の方位測定と、垂直アンテナの指向性を利用した高度角の推定を行った。観測は100 Hz – 96 kHzの広帯域で行われたため、各方向の周波数成分間の位相差が約10度以内となる周波数領域のみを使用した解析とした。観測時間帯における、顕著な雷運活動地域(主に五大湖西岸とメキシコ湾領域)の方位との比較から、方位の測定精度は10度程度と見込まれるが、高度角については、特に高度角が大きい場合、20度程度の不確定さが見込まれる。この解析によって得られた上記の非パルス性信号の方位・高度角は、誤差の範囲内で、SRCの減速や高度変化が顕著ではない火球フェイズにおいて、SRCの推定位置と良い一致を示している。