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[PEM17-P03] 陽的時間領域有限差分法のクーラン条件の緩和および数値誤差の低減

キーワード:FDTD、クーラン条件、分散関係、位相速度、ラプラシアン、異方性
本研究では、FDTD (Finite-Difference Time-Domain)法の時間発展式に対し、高階微分項を追加することで、クーラン条件の緩和および数値誤差の低減を行った。FDTD法は、電磁場の時間発展を解く数値計算手法であり、空間および時間について2次精度の差分をMaxwell方程式に適用することで時間発展式が求められる (Yee 1966)。FDTD法では数値的な位相速度と理論的な光速の差に依存して数値振動が生じる。この振動の低減のため、空間差分精度を上げた手法が提案されている (Fang 1989; Petropoulos 1994)。しかし、近似精度の上昇および空間の高次元化に伴ってCourant条件は厳しくなるという問題を抱えていた。そこで、 FDTD(2,4)の時間発展式に高階微分項を追加する手法を開発した (Sekido & Umeda, IEEE TAP, 2023)。この手法によりCourant条件が緩和されたが、Courant数が大きくなるほど数値誤差が増大するという問題が残されていた。本研究では、Courant条件の緩和と同時に数値誤差を低減させるため、2通りの高階微分項を用いて新たな陽的かつ非散逸なFDTD法を開発した。第一に、FDTD(2,6)の時間発展式に対し、空間3階および5階の1次元微分項を追加した (Sekido & Umeda, PIER M, 2024)。第二に、FDTD(2,4)の時間発展式に対し、ラプラシアンを考慮した3階微分項を追加した (Sekido & Umeda, EPS, 2024)。それぞれの手法はCourant数が1までの範囲で安定である。テストシミュレーションの結果から、1次元微分項のみを考慮した手法では、数値誤差はほとんど改善されないことが分かった。一方、ラプラシアンの考慮により、数値誤差の異方性が大きく改善され、数値振動も大きく減少した。