日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2024年5月28日(火) 15:30 〜 16:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木村 淳(大阪大学)、佐柳 邦男(NASA Langley Research Center)、土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)、座長:堺 正太朗(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、丹 秀也(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

15:45 〜 16:00

[PPS01-08] ひさき衛星とJuno探査機から得られた木星内部磁気圏における高温電子分布

*眞田 聖光1吉岡 和夫1土屋 史紀2松下 奈津子2 (1.東京大学、2.東北大学)

キーワード:木星、磁気圏、プラズマ

木星磁気圏の挙動はイオの火山由来のプラズマによって駆動されると考えられており、太陽風によって駆動される地球磁気圏と比較することで、惑星一般における磁気圏構造の理解に繋がる。木星は地球と比較して高速で自転しており、磁力線は木星とともに共回転する。イオには多数の火山が存在し、噴火により発生したガスは宇宙空間でプラズマになり、磁気圏の共回転する磁力線に捕捉されることでトーラス状のプラズマ帯を形成する(イオプラズマトーラス:IPT)。木星磁気圏では、磁力線がプラズマを捕捉することで質量が増加し、遠心力により引き延ばされ、プラズマが外側に輸送された結果、内部磁気圏において高温電子の内側への流入や、外部磁気圏においてリコネクションが起こると考えられている。これまでの地上観測やその場観測を通して、実際にこれらの現象を示す観測事実はあるが、イオ由来のプラズマの具体的な輸送・加速メカニズムと、イオの火山活動と磁気圏の相互作用が不明である。この輸送メカニズムの理解には、IPTから木星遠方領域において解像度が高く広い範囲での観測が必要であると考える。
 本研究では、木星内部磁気圏でのプラズマ輸送を明らかにするため、長期的に電子分布の様子を求める必要があると考えた。そこで2つの宇宙機、ひさき衛星とJuno探査機に着目した。ひさきは地球周回軌道上から、木星とIPTを含むほぼ一定の視野で遠隔観測している。一方でJunoは木星の周回軌道上で木星のその場観測を行う。Junoの軌道は木星から数10RJ (1RJ: 1木星半径)に及ぶ遠方磁気圏から1~2 RJ近くまで接近する観測(Perijove: PJ)を行っている。PJの際にIPT付近を通過するJunoと、IPTを観測するひさきのデータと組み合わせることで、相補的な観測ができると考えた。ひさきによって観測されたスペクトルデータに対して、スペクトルフィッティングを行うことで電子パラメタを求め、これとJunoによって取得された電子エネルギー分布観測データを相補的に用いることで、内部磁気圏での電子分布変化を明らかにし、輸送メカニズムの解明を目指すことを考えた。
 ひさきの解析から求まった高温電子分布は、Junoの解析で得た50eV以上の電子分布平均の結果と比較し、木星遠方になるにつれて高温電子が増加するという傾向が一致した。過去の研究では、木星内部磁気圏のプラズマ輸送の様子は、遠方観測結果から推定されていたが、本研究では直接観測を含めた解析を行い、両者の分布に同様の傾向が見られたことを示した。これにより、木星の内部磁気圏における電子分布がより詳細に求まるようになり、イオの火山活動などの要因により電子分布が変化する可能性も示せるようになった。