[P-PS04] Recent advances in the science of Venus

[PPS04-05] 電波掩蔽データを用いた金星の極域大気構造と大気重力波の変動の研究

*杉浦 美優¹、今村 剛¹、安藤 紘基² (1. 東京大学、2.京産大)

キーワード：金星、雲層内対流、大気重力波、電波掩蔽

金星には、濃硫酸から成る分厚い雲層が高度50-70 kmにおいて全球的に存在する。雲底付近では雲が下層大気からの赤外放射を吸収することで雲層下部が加熱される一方、雲頂付近では宇宙空間への赤外放射によって大気が冷却されるため、雲層下部（高度50-55 km）で鉛直対流が生じている。この鉛直対流を励起源の一つとする大気重力波は鉛直方向に伝播し離れた高度間での運動量輸送に寄与するため、金星の大気大循環を考える上で重要である。
先行研究では、金星大気における対流層の厚さや対流起源と思しき大気重力波振幅の緯度依存性や地方時依存性が示唆されている。例えば、金星では地球とは逆に、高緯度ほど対流層が厚くなっていることがVenus Expressやあかつきの電波掩蔽観測によって示されている(Tellmann et al. 2009; Ando et al. 2020)。これは、高緯度では雲頂付近での太陽光加熱が小さくなるので、高緯度ほど対流が強化されることに起因すると考えられている(Imamura et al. 2014)。同様にして、対流は昼側より夜側で強くなると予想されている。また、高緯度ほどより振幅の大きい大気重力波が励起されるとみられる(Tellmann et al.2012; Ando et al. 2015)。
本研究では、Venus Expressの電波掩蔽観測データを用いて、金星極域大気における対流層の構造と大気重力波がAndo et al.(2017)の報告した周期3日程度の惑星規模波動にともなって変動する様子と、それらの間の関係を調べる。