日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 火星と火星衛星

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:宮本 英昭(東京大学)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、中村 智樹(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)

17:15 〜 18:45

[PPS06-P06] 深層学習による火星ローバー撮影画像からのダスト光学的厚さの導出

*鹿志村 樹1黒田 剛史1佐藤 知紘2岩渕 弘信1寺田 直樹1 (1.東北大学、2.国立研究開発法人情報通信研究機構)

キーワード:火星、ダスト、深層学習、画像解析

今日まで、火星ではダストストームをはじめとする大気の諸現象を解き明かすために周回機やローバーによる観測や数値シミュレーションを用いた研究などが行われてきた。私たちは火星において地球の天気予報のようなシステム、つまり火星天気予報の確立を目指して研究を行っている。
火星天気予報を確立する上で、地球での天気予報の発展にAMeDAS(地域気象観測システム)が大きく貢献してきたことを鑑みると、火星でもこのような多点での気象観測システムを構築することはその発展に多く影響すると考えられる。特にダストが支配する火星において、ダスト量の指標となり得る光学的厚さについては多くの観測が行われることが望ましい。しかし、カメラによる太陽直接撮像や分光器によって行われる従来の火星ローバーによる光学的厚さの観測は、装置開発や観測プロセスにおいてリソースを多く消費するため、これを多点で達成することは容易ではない。そこで、私たちはこれらに代わる新たな光学的厚さの観測方法を開発することを考えた。ダストの量によって大気の視認性が異なることを利用し、火星ローバーが撮影した画像から光学的厚さを深層学習モデルによって推測するという方法である。画像データからPM2.5等のエアロゾル濃度を測定する研究は地球大気については報告がある (Chakma et al., 2017; Ma et al., 2018; Sato et al., 2023)が、火星大気への適用は本研究が初の試みである。今回は、深層学習ライブラリであるTensorFlow/Kerasを用いて簡易的な構造の畳み込みニューラルネットワークのモデルを作成し、火星ローバーCuriosityによってMY31~35に撮影された画像を学習させてその後のMY36の光学的厚さの予測を行った。本発表では現在の段階で得られている初期の解析結果の紹介にとどまるが、これからモデルの設計や画像データの処理方法の見直しなどを検討していくことで、より観測に近い値を画像から推定することを目指す。
謝辞:本研究はJST創発的研究支援事業 グラント番号JPMJFR212Uの支援を受けている。